

模写した絵をSNSに投稿すると、著作権侵害で1000万円以下の罰金が科されることがあります。
漫画を描きたいと思って模写を始めたのに、何度やっても元絵と似ない——そんな壁にぶつかった経験はないでしょうか。実は、この問題の原因は「手を動かす量が足りない」ではありません。
模写が上達しない最大の理由は、「ちゃんと観ていないから」です。
多くの初心者は、元絵を「なんとなく見ながら」線を引いています。これは厳密には「観る」ではなく「見る」に過ぎません。絵が上手くなるための模写とは、モチーフの形・パーツの位置関係・大きさの比率という3つの情報を、図形として正確に情報化する作業です。
「目の形はなんとなくこんな感じ」という先入観で描き続けると、いくら時間をかけても狂いが直りません。これが基本です。
具体的に観るべき3点を整理すると次のとおりです。
この3つをしっかり把握できていれば、必ずそっくりに描けます。描けないのは、どこかで情報を見間違えているサインです。その場合は一度描くのをやめて、もう一度じっくり元絵を観直しましょう。観ることへの投資が、模写の質を決めます。
参考:観察眼と模写の関係について詳しく解説されています。
模写は描く練習じゃない観る練習!極めれば3つのスキルが覚醒する - maekoart.net
観る力の大切さを理解したうえで、実際の模写の手順を確認しましょう。順番を守るだけで仕上がりがまったく変わります。
ステップ1:じっくり観察する(描く前に最低3分)
いきなり鉛筆を持たないことが鉄則です。全体の比率、髪の毛の束感や毛先の位置、余白の割合、各パーツの構造まで、細部を頭のなかに構築してからスタートします。この「観察タイム」を省略するのが最大のNGです。
ステップ2:アタリをとる(シルエットだけをざっくり描く)
最初から細部を描き込まず、全体のシルエットと大まかなパーツ配置を薄い線でとります。手首のスナップを使ってスムーズな線を引くのが基本です。指先だけで描こうとすると線が硬くなります。目線は全体と細部を交互に動かし、一点に固定しないようにしましょう。
ステップ3:描き込みを開始する
アタリが整ったら、インプットした情報と元絵を交互に確認しながら細部を描き込んでいきます。慣れてきた人は自分の「手癖」が出やすい箇所(目の形、輪郭の丸み、など)を意識して抑えましょう。
ステップ4:元絵と比較して修正する
ある程度描けたら元絵と並べて確認します。違う箇所があれば積極的に修正します。模写に「完璧」というゴールはありません。できる限り細かく見比べ、納得がいくまで修正を繰り返す姿勢が上達を加速させます。
この4ステップが基本です。
描き終わった模写は捨てずにとっておきましょう。1ヶ月後に見返すと、自分の成長が目に見えてわかり、モチベーションの維持につながります。
参考:模写の4ステップとやり方を図解で解説しています。
【初心者向け】模写のコツを解説!絵を上達する模写のやり方 - egaco
模写は画力向上に有効な練習法ですが、やり方を間違えると時間をかけても伸び悩む原因になります。これは意外ですね。
まず「ただ線をなぞるだけの模写」は、ほとんど意味がありません。元絵の線を追うだけでは、絵の構造や描き方の理由を理解できないためです。専門学校の講師の観点からも「単に線をまねするだけの模写に意味はない」と言われています。大切なのは「なぜ作者がこの線を引いたのか」を考えながら描くことです。
次に、模写だけを延々と続けることにも落とし穴があります。模写ばかり続けていると、特定の漫画家の癖が自分の絵に染み付いてしまい、オリジナルのキャラクターを描こうとしたときに筆が止まる状態になります。これは「手癖の固定化」と呼ばれる状態で、一度ついてしまうと修正に苦労します。
つまり模写は「インプット」であり、学んだことをオリジナルの絵で試す「アウトプット」とセットで進めることが重要です。
模写の合間にオリジナルの絵を描いたり、模写後に「手本を見ないで同じ絵を思い出しながら描く」という再現練習を加えると、インプットが記憶として定着しやすくなります。覚え模写と呼ばれるこのやり方は、オリジナルを描く力に直接つながります。
参考:模写の種類と「覚え模写」「盗む模写」の違いについて詳しく解説されています。
模写は描く練習じゃない観る練習!極めれば3つのスキルが覚醒する - maekoart.net
模写の練習をしていると、「うまく描けた!SNSに投稿したい」という気持ちになりますが、ここには法的な落とし穴があります。
漫画やイラストを模写すること自体は著作権侵害にはあたりません。これは私的利用の範囲に含まれるためです。しかし、模写した作品をSNS(Twitter/X・Instagram・Pixivなど)に投稿したり、グッズを作ったりすることは「複製権侵害」に該当します。罰則は厳しく、著作権法第119条では10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が定められています。
東京ドーム1個分の面積の罰金ではなく、1000万円という具体的な金額です。痛いですね。
著作権侵害は「親告罪」といって、著作者側が訴えない限り実際に罰せられる可能性は低いですが、権利者から削除請求や損害賠償請求を受けるリスクはゼロではありません。「模倣絵だとわかるようにキャプションに書いた」「練習のためだと説明した」場合でも、公開した時点でリスクは発生します。
模写した作品の正しい扱い方は以下のとおりです。
| 行為 | 著作権的なリスク |
|---|---|
| 手元のスケッチブックに保存する | ✅ 問題なし(私的利用の範囲) |
| PCのローカルフォルダに保存する | ✅ 問題なし(私的利用の範囲) |
| SNSに投稿する(例:Twitter/X) | ⚠️ 複製権侵害に該当する可能性あり |
| 模写でグッズを作り販売する | ❌ 著作権侵害・販売差止・損害賠償の対象 |
模写はスキルアップのための手段です。完成した作品はスケッチブックや個人フォルダに保管し、見返して上達を確認するために活用しましょう。
参考:模写と著作権の関係について法的観点から詳しく解説されています。
模写が著作権侵害に該当するケースを解説!注意したい著作権法を紹介 - IP mag
「模写を始めたけど、あとどれくらい続ければ上達する?」という疑問は、多くの初心者が持つものです。目安を知っておくと、諦めずに継続できます。
実際の経験談をもとにした目安によると、1日3〜4時間の練習を続けて「模写から一旦卒業できる」レベルに達するまでには、約2年・累計2,500時間前後かかるとされています。ドラゴンボールやワンピースのような比較的シンプルな絵柄のキャラクターを30分〜1時間で描き写せるようになったら、一区切りの目安です。
2,500時間というのはかなりの長さですね。毎日1時間なら7年近くかかります。「1日3時間」が現実的な目標として設定しやすい理由がわかります。
ただし重要なポイントとして、やみくもに何でも模写すればいいわけではありません。お手本の選び方で効率が大きく変わります。
また、いきなりアニメキャラの模写から始めることも非推奨です。人体比率や立体感の基礎知識を持たないまま模写すると、変な癖がついてしまいます。模写を始める前に人体の基礎比率(頭身の考え方、関節の位置など)を大まかに学んでおくだけで、模写の質が一段上がります。
参考:模写に適したお手本選びと参考書3冊を紹介しています。
マンガの模写で絵はうまくなる?効果的な模写の方法とおすすめ参考書 - quirkydrawingclassroom.com
「何度やっても似ない」という壁を突破するために、あまり知られていない方法を一つ紹介します。それが「逆さ描き(逆さ模写)」です。
通常、人の顔を見ると脳は「これは目だ、鼻だ」と自動的に解釈し、記憶の中にある「目のイメージ」を描こうとします。これが模写が狂う原因の一つです。逆さ描きとは、元絵を180度回転させた状態で模写する方法で、脳が「これは何のパーツか」を認識しにくくなるため、形をより純粋に図形として捉えられるようになります。
実際にCLIP STUDIO PAINTの公式サイトでも、「逆さにして描くと上手く描ける」という上達法として紹介されています。
この方法の効果は次の2点です。
逆さ描きをやってみる手順はシンプルです。模写したい元絵を印刷して上下逆さにする(またはデジタルの場合は180度回転させる)だけです。この状態で通常どおり模写します。完成したら両方を正位置に戻して比較するという手順で進めましょう。
「同じ絵を何度やっても似ない」と感じたときは、逆さ描きで一度試してみましょう。思っている以上に形が取りやすくなる感覚が得られます。
参考:逆さ描きの上達効果について解説されています。
【模写で上達】絵の形をとらえる方法&実践トレーニング - CLIP STUDIO PAINT公式