著作権の期限と音楽の保護期間を漫画家が知るべき理由

著作権の期限と音楽の保護期間を漫画家が知るべき理由

漫画を描く人が動画やSNSで音楽を使うとき、著作権の期限はどこまで関係するのでしょう?保護期間の計算方法から著作隣接権の落とし穴、パブリックドメインの正しい使い方まで、知らないと損するポイントをまとめました。この記事の内容、あなたはすでに知っていましたか?

著作権の期限と音楽の保護期間:漫画家が知るべき基本と注意点

「著作権が切れたクラシック曲なら、漫画のPR動画に自由に使えると思っていませんか?実は著作隣接権が残っていて、1,000万円以下の罰金リスクがあります。」


📌 この記事の3つのポイント
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音楽の著作権保護期間は「死後70年」

2018年のTPP関連法改正により、保護期間は死後50年から死後70年に延長。計算の起算点は「死亡した年の翌年1月1日」です。

⚠️
著作権が切れていても「著作隣接権」が残る

作曲家の権利が消えても、演奏・録音した実演家やレコード会社の権利(著作隣接権)は発行から70年間存続します。

安全に使えるのは「真の著作権フリー素材」だけ

著作権・著作隣接権の両方が消滅または放棄されている音源のみ、許諾なしで使用可能。使用前に出所を必ず確認しましょう。


著作権の期限はいつ切れる?音楽の保護期間を正確に知る


音楽の著作権には「いつまで保護されるか」という期限があります。日本では著作権法第51条により、個人名義の楽曲は著作者の死後70年間保護されます。


保護期間は厳密に計算されます。起算点は「著作者が死亡した年の翌年1月1日」です。たとえばある作曲家が2020年5月に亡くなった場合、2021年1月1日を起算点として70年後、つまり2090年12月31日に著作権が消滅します。


この「翌年1月1日」スタートのルールは見落としがちです。亡くなった年の12月末日に死亡した場合でも、翌年1月1日から70年のカウントが始まります。結論は「亡くなった年の翌年から数えて70年後の12月31日まで」です。


2018年以前は保護期間が「死後50年」でした。TPP関連法の施行(2018年12月30日)により20年延長されています。注意が必要なのは、2018年12月29日時点で保護期間内だった楽曲はすべて70年に延長された点です。50年が過ぎたからフリーだと思っていた楽曲が、実は延長によって再び保護下に入っているケースがあります。これは見落としやすいポイントですね。


団体・法人名義(バンド名義や会社名義など)の楽曲は計算方法が異なります。この場合は「著作者の死後」ではなく、楽曲の公表から70年間が保護期間です。個人名義か法人名義かによって、期限の計算がまったく変わります。
























楽曲の種類 保護期間の基準 起算点
個人名義(作詞・作曲) 著作者の死後70年 死亡した年の翌年1月1日
共同著作(複数の著作者) 最後に亡くなった著作者の死後70年 最後の死亡年の翌年1月1日
無名・変名・法人名義 公表から70年 公表した年の翌年1月1日


参考:音楽著作権の保護期間と計算方法(JASRACによる解説)
JASRAC公式サイト「音楽の著作権とは」


参考:著作権保護期間の延長に関する文化庁の公式Q&A
文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」


著作権が切れた音楽でも使えない?著作隣接権という落とし穴

「著作権の期限が切れているなら自由に使える」という考えは、実は半分しか正しくありません。


音楽には著作権のほかに、著作隣接権という権利が存在します。著作隣接権とは、音楽を「伝える」役割を果たす人たち——実演家(歌手・演奏家)やレコード製作者(レコード会社など)——に与えられた権利です。詞・メロディを作った人の著作権が消えても、それを録音・演奏した人の著作隣接権は別に存続します。


保護期間は「実演または発行の翌年から70年間」です。


つまり、モーツァルトの楽曲の著作権はとっくに消滅していますが、2010年に録音・発売されたモーツァルトのCDには2080年12月末まで著作隣接権が残っています。楽曲フリーでも音源はフリーではない、が原則です。


実際にこの落とし穴にはまりやすいのが、漫画の宣伝動画やSNSリール動画の制作時です。「クラシックだから大丈夫」とCDの音源をそのまま動画に乗せると、著作権侵害ではなく著作隣接権侵害という別の問題が発生します。著作権侵害と同様に、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。痛いですね。


🔑 著作隣接権が存続しているかどうかをチェックする手順:
- その音源のCDや音楽データが発行された年を確認する
- 発行年の翌年1月1日から70年後が著作隣接権の消滅日
- 消滅日を過ぎていない場合は、音源の使用許諾が必要


参考:著作隣接権の仕組みとクラシック音楽への適用について
OTORAKU「クラシックには著作権がない、はウソ。知っておきたい」


著作権フリーとパブリックドメインの違い:漫画家が混同しがちなポイント

「著作権フリー」と「パブリックドメイン」は混同されがちですが、法的意味が異なります。この違いを理解しておくことが条件です。


パブリックドメイン(PD)とは、著作権の保護期間が終了するか、著作権者が権利を放棄した状態を指します。パブリックドメインの著作物は、原則として誰でも自由に使用・複製・配布ができます。死後70年を経過した作曲家の「楽曲そのもの(メロディ・歌詞)」は、パブリックドメインに相当します。


一方、著作権フリーは「著作権は存在するが、一定条件のもとで自由に使用を許可する」という意味です。これは著作権者が使用許諾を事前に与えている状態で、条件(商用利用可否・クレジット表記など)は素材ごとに異なります。「フリー」という言葉に引きずられて何でも使えると誤解しやすいですが、条件を確認しないとトレブルになる場合があります。


また、「ロイヤリティフリー」も要注意です。ロイヤリティフリーは「使用するたびにロイヤリティ(使用料)を払わなくていい」という意味であり、著作権そのものが消えているわけではありません。ロイヤリティフリーでも商用利用禁止の制限が付いているものが多くあります。


漫画制作で使いやすいのは以下の音源です。


| 種類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| パブリックドメイン音源 | 著作権も著作隣接権も消滅 | 出所と発行年の確認が必須 |
| CC0ライセンス素材 | 著作権者が権利を放棄 | 使用条件の確認を |
| 著作権フリー素材サイト | 許諾済みの素材 | 商用利用可否をサイトごとに確認 |
| JASRAC管理外の自作曲 | 制作者本人が権利を保有 | 依頼制作の場合は契約書確認 |


著作権の期限が切れたクラシック音楽の正しい使い方

著作権が切れているクラシック音楽を正しく使うには、「楽曲の権利」と「音源の権利」を別々に確認する手順が必要です。


たとえば、ベートーヴェン(1827年没)の楽曲は著作権が消滅しています。これは間違いありません。しかしYouTubeやSpotifyで聴けるベートーヴェンのほとんどは、現代の演奏家やレコード会社が録音したものであり、音源には著作隣接権が存在します。楽曲フリーが基本です。しかし音源のフリーは別問題という認識が必要です。


この二段階の確認をしないで動画BGMに使うと、プラットフォームの自動検出システム(Content ID)に引っかかり、動画が削除されたり収益化が停止されたりします。漫画のプロモーション動画が突然非公開になるリスクがある、ということです。


本当に安全に使えるクラシック音源を探すなら、以下を基準にするのがベストです。


- 🎵 IMSLPなど楽譜・音源の著作権情報が明記されているサイトを使う
- 🎵 音源の録音・発行年が70年以上前のものを選ぶ
- 🎵 著作権フリー音楽を専門に提供するサービス(Audiostock・MusMusicなど)を活用する


著作権が切れた楽曲であっても、「どの演奏・録音の音源を使うか」で権利関係がまったく変わります。これが原則です。


漫画のプロモーション用動画のBGMには、著作隣接権ごとフリーである「真の著作権フリー素材」を選ぶのが最も安全な方法です。月額数百円〜数千円で使い放題のロイヤリティフリー音楽サービスを契約する選択肢も現実的です。


参考:著作隣接権を含めた音楽利用時の注意点(権利情報データベース含む)
契約ウォッチ「音楽の著作権とは?権利の内容・期間・使用する際の注意点」


著作権侵害になるとどうなる?漫画家が知るべき法的リスクと実際の影響

「知らなかった」では済まないのが著作権侵害です。法律上は、故意でなくても侵害が成立します。


著作権法第119条によると、著作権・著作隣接権を侵害した場合のペナルティは、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(あるいはその両方)です。法人の場合はさらに重く、3億円以下の罰金になることもあります。刑事罰とは別に、権利者から損害賠償請求(民事訴訟)を起こされる場合もあります。


漫画を描いている個人クリエイターにとって、より身近なリスクは以下のようなものです。


- 📌 YouTubeのContent IDシステムによる動画削除・収益停止:漫画の宣伝動画や制作過程の動画に問題のある音楽が含まれると、JASRACと包括契約を結んでいるYouTubeが自動検出し、動画が非公開または削除されます。


- 📌 Instagramなどのリール・ストーリー削除:SNSも同様の自動検出システムを持っており、投稿がサイレントに削除・制限されます。


- 📌 権利者からの直接請求:主に法人向けですが、個人クリエイターへの警告通知が増えているのも事実です。


特に漫画家がSNSやYouTubeで発信を行う場合、動画の閲覧数が増えるほど検出リスクも上がります。フォロワーが増えてきたタイミングで突然削除通知が来る、というのは実際によくある話です。


重要なのは、「意図がなかった」「短い時間しか使っていない」という言い訳が通用しない点です。著作権法では「数秒でも無断使用は侵害」が原則です。


著作権リスクを回避するための現実的な対策は、最初から安全な音源だけを使うルールを自分の中で作ることです。著作権フリー素材専用のサービスをブックマークして、BGMを探す際はそこから選ぶと決めるだけで、大半のリスクは避けられます。確認する、という1アクションが大切です。


参考:著作権侵害の罰則・事例についての詳細解説
顧問弁護士.com「著作権侵害とは?成立要件・事例・罰則【完全ガイド】」


【漫画家だけが気をつけるべき盲点】キャラクターの劇中歌・鼻歌シーンの著作権

これはあまり知られていない独自の視点です。漫画のコマの中でキャラクターが「鼻歌を歌っているシーン」や「歌詞の一部をセリフとして言うシーン」にも著作権は適用されます。


歌詞は「言語の著作物」として著作権法で保護されています。たとえば、キャラクターのセリフとして「♪〇〇〜」と実在の楽曲の歌詞を1行でもそのまま書いた場合、著作権者の許諾が必要になるのです。これは意外ですね。


特に問題になりやすいシーンは次のようなものです。


- 🎵 キャラクターが実在する曲名を言い、歌詞の一節を口ずさむコマ
- 🎵 作中に登場する架空のライブシーンで実在の歌詞を使う
- 🎵 主人公が音楽を聴きながら「〇〇って曲の△△ってフレーズが好き」と語るセリフ


漫画そのもの(紙・電子書籍)に歌詞を掲載する場合は、JASRAC(または作詞者・出版社)への申請と使用料の支払いが必要です。


また、漫画の読み上げ動画やPR動画でBGMとして使用する「音楽」とは別に、漫画本文の中に歌詞が含まれているかどうかも確認しましょう。書籍・電子書籍・同人誌すべてに適用されるルールです。これだけ覚えておけばOKです。


ただし、「架空の曲名・架空の歌詞」を自作して使う場合は著作権の問題は発生しません。既存の曲に似せた架空の歌詞でも、元の曲の歌詞を「引用」していない限りは問題なし、が原則です。


漫画の中で音楽を表現したい場合は、歌詞を実在の曲からそのまま使わず、オリジナルの歌詞や曲名を作るか、JASRAC管理楽曲の申請を経て使用する方法の2択で考えておくと安心です。


参考:CRICによる著作権Q&A(歌詞の引用・使用に関する解説)
CRIC(著作権情報センター)「著作権は永遠に保護されるの?」




小学生のうちから知っておきたい 著作権の基本