

「crazy smile」1語だけ入れても、本当の意味での狂気顔はほぼ出てきません。
AI画像生成で「狂気の表情」を出したいとき、最初に思い浮かぶのは crazy smile や crazy eyes といったタグではないでしょうか。しかし実際には、「狂気」に関連するプロンプトは複数あり、それぞれが持つニュアンスはかなり異なります。つまり、タグを正しく選ばないと、意図した表情にならないということです。
まず代表的な狂気系プロンプトを整理しましょう。
| プロンプト | 日本語の意味 | 主な特徴 |
|---|---|---|
crazy smile |
狂気の笑顔 | 鋭く上向きの口角、不気味な表情。顔が影で覆われることが多い |
crazy eyes |
狂気に満ちた目 | ヤンデレ表現に使われる。瞳孔が開いたり焦点がずれたりする |
crazy |
病んでいる表情全般 | 複合的な狂気表現。単体では弱く、他タグとの組み合わせが前提 |
empty eyes |
虚ろな目 | ハイライトのない死んだ目。感情を失った狂気を表現 |
evil smile |
邪悪な笑顔 | 悪役的な笑み。crazy smileより計算された悪意が出る |
evil grin |
邪悪なにやにや | 捕食者のような笑み。相手を見下す雰囲気 |
shaded face |
顔に影がかかった状態 | 表情を暗く演出する。狂気感を増幅させる補助タグ |
この一覧を見てわかる通り、「狂気」という感情を表現するルートは大きく分けて2つです。「笑顔ベース(crazy smile / evil smile / evil grin)」と「目の表現ベース(crazy eyes / empty eyes)」になります。
笑顔ベースは「表面的には笑っているのに、何かおかしい」という不気味さを出すのに向いています。
対して目ベースのタグは、「理性が壊れている」「感情がなくなっている」という深い狂気を表現したいときに効果的です。どちらを軸にするかで、キャラクターの狂気の質がまったく変わってくるため、ここを明確に意識することが重要です。
漫画的な観点で言えば、ヴィランや追い詰められた主人公には「笑顔ベース」、廃人化・洗脳・絶望のキャラクターには「目ベース」を選ぶと表現の方向性が一致しやすいです。
「1語で狂気が出ない」という経験は、多くの方が感じているはずです。それが基本です。実は狂気表情は、目・口・影の3つのレイヤーを重ねることで初めて完成します。
まず「目」の表現から見てみましょう。
crazy eyes:ヤンデレ的な焦点のずれた目。瞳孔が通常より開いて見えるempty eyes:ハイライトのない、光の消えた目。洗脳や廃人化の表現に最適constricted pupils:驚愕・極度の緊張で瞳孔が細くなった状態。恐怖と狂気の中間点wide-eyed:目を見開いた状態。他の狂気タグと合わせると強度が増すshading eyes:目に影がかかり、内面の暗さが表に出る演出次に「口」のプロンプトです。
crazy smile:不気味な笑顔の定番。単体でもそこそこ効くが、他要素との組み合わせで真価を発揮するevil smile:計算された悪意ある笑み。ヴィランの得意げなシーンに合うopen mouth:口を開けることで、叫びや狂笑の演出ができるclenched teeth:歯を食いしばった表情。狂気の一歩手前、怒りと狂乱の間の表現wavy mouth:波打つ口。漫画的な恐怖・錯乱の定番表現最後に「影・雰囲気」の補助タグです。
shaded face:顔全体に陰影を落とす。狂気感をドラマチックに増幅させるblood on face:顔に血がついた状態。闘いや精神的崩壊のシーンにanger vein:怒りマーク💢が浮き出る。狂気+怒りのミックス表現SNS上でよく使われているプロンプトの組み立て例を参考にすると、狂気の笑顔を全力で出したい場合は shaded face, empty eyes, crazy smile, open mouth という4語の組み合わせが定番とされています。これは確かに効果的です。
シーン別のおすすめ組み合わせをまとめると、次のようになります。
| 漫画のシーン | おすすめプロンプト組み合わせ |
|---|---|
| ヴィランの高笑い | evil grin, shaded face, looking at viewer |
| ヤンデレキャラの豹変 | crazy eyes, crazy smile, open mouth |
| 廃人・洗脳キャラ | empty eyes, expressionless, blank stare |
| 追い詰められた主人公 | constricted pupils, wavy mouth, trembling |
| 狂笑するボスキャラ | shaded face, evil smile, wide-eyed, anger vein |
組み合わせが基本です。1語だけで全部やろうとしないことが、漫画クオリティへの近道です。
参考:Danbooruタグ一覧(NovelAI・Stable Diffusionで有効なプロンプト群の大元データベース)
Danbooru表情タグ一覧(expressions) — danbooru.donmai.us
同じプロンプトでも、NovelAIとStable Diffusionでは出力される絵柄と精度がかなり違います。知っておくと得します。
まず前提として、NovelAIはDanbooru由来のタグを非常によく学習しており、crazy eyes や crazy smile などの感情タグに対してかなり敏感に反応します。特に NovelAI V3 は表情の細やかな差分を出すのが得意で、漫画的なアニメ塗りに近い絵柄でキャラ表情差分を量産するのに向いています。
対してStable Diffusionは、モデルの種類によって表情の再現精度が大きく変わります。汎用モデルでは細かい表情差分が難しく、アニメ特化モデル(counterfeitV30など)を使うことで初めてNovelAI水準の表情表現に近づけます。
強調構文の書き方も両者で異なります。以下に整理します。
| ツール | 強調構文の書き方 | 例 |
|---|---|---|
| NovelAI | 波括弧 { } で囲む(1段階ごとに1.05倍) |
{crazy smile} / {{crazy smile}} |
| Stable Diffusion | 丸括弧+数値 ( :数値) |
(crazy smile:1.5) |
強調構文を使うことで、生成される狂気の度合いを細かく調節できます。これは使えそうです。
ただし、強調を重ねすぎると顔の形が崩れたり、他のプロンプト(髪型・服装など)が弱くなる副作用が出る場合があります。Stable Diffusionで (crazy smile:1.5) を入れたinpaint生成が最も安定したとされており、まず 1.3〜1.5 の範囲でテストするのが現実的な目安です。
Stable Diffusionで表情差分を生成する具体的な手順については、表情差分の技術解説が非常に参考になります。
Stable Diffusionで表情差分を生成する方法(inpaint・Seed値・ADetailer) — EdgeHUB by 株式会社ハイレゾ
また、タグの記述方式はツールによって異なります。NovelAIではカンマ区切り(1girl, crazy eyes, brown hair)、WaifuDiffusionではアンダーバー区切り+アルファベット順(1girl, brown_hair, crazy_eyes)が推奨されています。この書き方の違いを無視すると、プロンプトが意図通りに効かないことがあるため、使っているツールの記法を確認しておくことが重要です。
狂気の表情を作るうえで、意外と軽視されがちなのが「瞳孔・目の形」のプロンプトです。実は目の形だけで、表情の「狂気の種類」がまったく変わります。
漫画的な目の表現として使える主なタグを見てみましょう。
constricted pupils(収縮した瞳孔):極限の緊張や恐怖で瞳孔が針のように細くなった状態。冷静さを保ちながら内側で壊れているような演出に向くempty eyes(空虚な目):ハイライトが消え、感情が抜け落ちたような目。廃人・洗脳・絶望後のキャラに使うblank eyes(白目に近い状態):虹彩と瞳孔の両方がなく、強膜のみが白い。霊的・超常的な狂気の演出に向く@ @(くるくる目の顔文字タグ):目が渦巻いているような状態。コミカルな狂気や混乱の演出hollow eyes(空洞の目):暗い空虚な穴のように見える目。最も深い絶望・精神崩壊の表現black sclera(黒い白目):白目が黒く染まった状態。悪魔・呪術・憑依キャラに多用される目の形タグは「心理状態の深さ」を表すものだと考えると選びやすくなります。
たとえば「まだ理性はあるが精神が限界」のキャラなら constricted pupils と crazy smile の組み合わせが効果的です。「完全に理性を失った」状態には empty eyes や hollow eyes が合います。そして「非人間的・超常的な存在が覚醒した」ときは black sclera が一気にビジュアルのレベルを上げてくれます。
また、つり目を意味する tsurime、三白眼を意味する sanpaku といった日本語由来のタグも、NovelAIとStable Diffusionで有効に機能します。三白眼(sanpaku)は黒目の下に白目が見える状態で、「どこか人間離れした不気味さ」を表現するのに非常に使いやすいタグです。
crazy eyes と sanpaku の組み合わせは、ヤンデレキャラに漫画的な迫力を加えるうえで特に効果的で、多くのAI漫画クリエイターが活用しているテクニックです。
目の形タグのより詳細な解説(瞳孔の種類・特殊な目の形など)はこちらで確認できます。
表情・目の形のプロンプト(呪文)一覧【Stable Diffusion】 — SoreNuts
ここまで個別タグの解説をしてきましたが、漫画制作の実際の場面では「1枚の絵を作る」よりも「コマとして連続した表情を管理する」作業が課題になります。これは他の解説記事ではあまり触れられない視点です。
AI漫画制作で狂気の表情を扱うとき、実際に直面する問題は次の3つです。
1つ目は「キャラクターの顔が毎回変わってしまう」という問題です。プロンプトを少し変えるだけで顔が変わってしまうため、同一キャラが複数コマで別人に見えてしまいます。
この問題に対して有効なのが、Stable DiffusionのSeed値固定機能です。元になる画像のSeed値を記録・固定しておき、そこにinpaintで表情のみを上書きする方法が最も安定しています。Seed値はランダムに生成されている一見無意味な数字ですが、これを固定することでキャラクター全体の雰囲気を保ちながら表情だけ差し替えられます。
2つ目は「強調しすぎると顔が崩れる」という問題です。(crazy smile:2.0) のように強調を強くしすぎると、口が異様に広がったり目の形が歪んだりすることがあります。
1.3〜1.5 の範囲を基本にして調整するのが安全な方針です。
3つ目は「ネガティブプロンプトの設定ミス」です。
wavy mouth を使うと、髪型にも wavy が反応して「ウェーブヘア」になってしまうことがあります。この場合は、ネガティブプロンプトに wavy hair を追加することで解決できます。プロンプトは入れるだけでなく、「何を除外するか」も同時に考える必要があります。
また、NovelAIで表情差分を大量生成する場合、生成した画像のプロンプト・Seed値・ネガティブプロンプトを記録・管理することが非常に重要になります。後から「あのコマの表情はどのプロンプトだったか」を調べるのが困難になるためです。こういった管理コストも、AI漫画制作では避けて通れない現実的な課題です。
画像管理ツール「Eagle」はAI生成画像のメタデータ(プロンプト・Seed値・ネガティブプロンプト)を自動取得・整理できる機能を持っており、100枚・1000枚単位で画像が増えても検索で素早く目的の表情コマを見つけられます。プロンプト管理に困りだしたら、導入を検討する価値があります。
表情タグの網羅的なまとめや、実際の出力比較については、次のリンクが役立ちます。
【NovelAI・Stable Diffusion】表情呪文の総まとめ!思い通りの表情を描くコツも紹介 — runrunsketch.net