

ハイライトを「ただ安いだけのおじさんタバコ」と思っているなら、1箱分の520円損しているかもしれません。
現在、日本たばこ産業(JT)が販売するハイライトはレギュラーとメンソールの2種類だけです。かつては10種類以上のラインナップが存在していましたが、販売終了が相次ぎ、現行品は2銘柄に絞られています。
どちらも20本入りで1箱520円(税込)。コンビニで1本単位に換算すると26円という計算になります。2021年10月の増税で490円から30円値上がりして今の価格になりましたが、他の紙巻きタバコが600円台に突入する中、520円台を維持しているのは比較的リーズナブルな部類です。
| 銘柄名 | タール | ニコチン | 本数 | 値段(税込) |
|---|---|---|---|---|
| ハイライト(レギュラー) | 17mg | 1.4mg | 20本 | 520円 |
| ハイライト・メンソール | 10mg | 0.8mg | 20mg | 520円 |
レギュラーのハイライトは、現行JT製品の中でもタール17mgとかなり高タール寄りの銘柄です。ラム酒(ラムフレーバー)を香料に使っているため、吸いはじめに洋酒のような独特の甘い香りが漂います。この独特な風味が「うますぎる」と長年の愛煙家に支持されている最大の理由です。
一方のハイライト・メンソールはタール10mg・ニコチン0.8mgと、レギュラーより軽め。メンソールが全面に出るタイプではなく、タバコ本来の味とメンソールの爽快感が同居するバランス型です。2004年1月の発売以来、女性ファンも多い銘柄として知られています。
つまりこの2種類、同じ「ハイライト」でも全く性格が異なります。
参考:JT公式のハイライト製品情報はこちらで確認できます。
ハイライトの発売は1960年(昭和35年)6月20日。当時の価格は1箱70円でした。現在の520円と比べると、実に約7.5倍の値上がりです。同じ期間に消費者物価指数は約4〜5倍ほどの上昇ですから、タバコは物価以上のペースで値段が上がってきた商品といえます。
値上げのタイミングはほぼ税制の変化と連動していました。主な推移をまとめると次のようになります。
| 年 | 価格 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 1960年(昭和35年) | 70円 | 発売開始 |
| 1968年(昭和43年) | 80円 | 専売公社一斉値上げ |
| 1975年(昭和50年) | 120円 | 製造コスト上昇 |
| 1983年(昭和58年) | 170円 | 専売公社値上げ |
| 1986年(昭和61年) | 200円 | たばこ消費税増税 |
| 2003年(平成15年) | 270円 | たばこ税増税 |
| 2010年(平成22年) | 410円 | 大幅なたばこ税増税 |
| 2018年(平成30年) | 450円 | たばこ税増税 |
| 2021年(令和3年) | 520円 | たばこ税増税 |
注目すべきは2010年の大幅値上げです。290円から一気に410円になった、1箱あたり120円の値上がりは当時の喫煙者に大きな衝撃を与えました。消費税10%の増税があった2019年は、多くの銘柄が値上がりしたにもかかわらず、ハイライトだけ450円に据え置かれています。コスト面でも「庶民の味方」としての矜持を見せた瞬間でした。
また、2026年4月からは加熱式タバコを中心にさらなる増税が実施される見通しとなっています。紙巻きタバコにも段階的な引き上げが波及する可能性があり、今後のハイライトの値段がどう変わるかは要注目です。
過去50年以上の詳細な価格推移データはこちらが参考になります。
過去70年あまりにわたる主要たばこの価格推移(GarbageNews)
現在は2種類しかないハイライトですが、かつては派生銘柄が豊富に存在していました。廃止・販売終了した銘柄は全部で8種類以上に上ります。廃盤になったのは理由があります。
- ハイライト・マイルド(1988年発売 → 2004年廃止):タール11mg・ニコチン0.8mgと軽めで、「ヤングハイライト」の愛称で親しまれた全国銘柄。
- ハイライト・ウルトラマイルド・ボックス(1999年発売 → 2004年廃止):タール3mgという超軽口。北海道限定発売だった地域銘柄。
- ハイライトデラックス(黒・茶)(1967年発売 → 1972年廃止):現行よりもタールが高い超ストロングタイプ。パッケージの色違いで2種類存在した。
- ハイライトエクスポート(1971年発売 → 1976年廃止):メタリックゴールドのパッケージが特徴。海外輸出向けに製造された経緯がある。
- ハイライト(25本入り)(1970年発売 → 1975年廃止):1970年の大阪万博会場内の自動販売機用に作られた特別品。100円でお釣りが出ないよう25本入りに設定された。
なかでも25本入りは、大阪万博という特定イベントのために設計された、今では想像もできない商品です。「自販機の釣銭を出さないため」という実用的な理由で本数が設定されたのは、昭和らしいエピソードといえます。
これだけ多くの銘柄が姿を消した背景には、タバコ市場全体の縮小と、軽量・加熱式タバコへの需要移行があります。現在残っている2種類は、ハイライトのコアなファンに根強く支持されているからこそ生き残っている銘柄です。なくなる予定はない、が現状です。
漫画を描く人なら、ハイライトのパッケージを「小道具」として描いたことがある方も多いでしょう。あのコバルトブルーに白文字というシンプルなデザインは、実は日本のデザイン史において重要な位置を占めています。
パッケージをデザインしたのは、後に著名なイラストレーターとなった和田誠氏。1960年のデザインコンペで選ばれた作品であり、若かりし頃の和田氏によるモダンデザインの代表作とされています。上部に放射状に並ぶ8本の黒線と、「hi-lite」の白文字。発売から60年以上が経過しても、基本的なデザインはほぼ変わっていません。
この「ハイライトブルー」と呼ばれた色は、当時の日本社会に深く浸透していました。
- 🚅 東海道新幹線0系(1964年開業)の車体色は、国鉄職員が会議室でハイライトの箱を見て配色を決めたとされています。
- 🚇 東京メトロ東西線のラインカラー(スカイブルー)も、当時の理事の指示でハイライトの色を参考にして決定されたと伝えられています。
タバコの箱の色が、日本の公共交通機関のアイデンティティに影響を与えていたという事実は、漫画家の視点からも面白いディテールです。キャラクターが手にするハイライトの青い箱は、昭和の時代感を1コマで伝える強力なビジュアルアイテムです。
創作においてタバコの銘柄や持ち方などの参考資料をまとめたまとめサイトもあります。
創作クラスタの参考に!煙草の持ち方から銘柄まで網羅した資料と参考絵まとめ(Togetter)
漫画を描く方にとって、ハイライトは「キャラクターの属性を一瞬で伝えられる道具」として機能します。実際、数多くの漫画作品にハイライトが登場しています。
最も有名なのは、福本伸行氏の麻雀漫画「アカギ〜闇に降り立った天才〜」です。主人公の赤木しげるは、19歳頃の若アカギ時代にハイライトを愛喫する描写が登場します。1960年代当時、ハイライトは最先端の人気銘柄だったため、ファッションとしてのタバコを意識する若者がハイライトを選ぶのは自然な設定でした。ちなみに赤木は年老いて「天 天和通りの快男児」に登場する53歳ごろにはマルボロに変わっています。これも「人物の変遷」を見事に表現した銘柄の使い方です。
また、アリスの楽曲「狂った果実」やサザンオールスターズの桑田佳祐氏(禁煙前)が愛喫していたことでも知られており、ハイライトはアーティストやクリエイター層に親しまれてきた側面があります。
漫画にタバコを描く際の実用的な注意点として、ハイライトのパッケージは以下の特徴を持っています。
- 📦 地色:コバルトブルー(ハイライトブルー)
- ✍️ ロゴ:白文字で「hi-lite」(すべて小文字)
- 📏 パッケージ上部:8本の黒線が放射状に広がるデザイン
- 📐 サイズ:キングサイズ(85mm)、フィルター付き
シンプルな構成なので漫画内でも再現しやすく、かつ一目でわかる記号性の高さが、多くの作家に選ばれてきた理由でしょう。
参考:ハイライトのパッケージや歴史についての詳細はWikipediaにまとまっています。