

Pinterestで拾った画像をそのままトレスすると、炎上で全作品削除になります。
漫画を描き始めた人がまずつまずくのが、「フリー素材」と「トレスOK素材」の違いです。この2つは似て非なるものであり、混同すると著作権トラブルや炎上のリスクが生まれます。
「フリー素材」とは、一般的に「無料でダウンロードして使える素材」を指します。しかし、「使える」とは「そのままデザインや印刷物に利用できる」という意味であって、「上からなぞって自分の漫画に転写してよい」という意味ではありません。一方、「トレスOK素材」とは、作者が「線をなぞることを明示的に許可した素材」です。この違いは非常に重要です。
つまり「フリー」は無料のこと、「トレスOK」は複製許可のことです。
たとえば、Google画像検索やPinterestで見つけた「フリーっぽい画像」は、実際には著作権者が存在する場合がほとんどです。それをトレスしてSNSに公開してしまうと、著作権法上の「公衆送信権」の侵害に該当するおそれがあります。法律上では、練習目的でも公開(SNSへの投稿含む)した時点でアウトになる可能性があります。
では、どう探せばよいのでしょうか?
安全に使える2人構図素材を探す場合は、以下の3か所が鉄板です。
- pixiv(作者が「トレスOK」「フリー素材」とタグ付けしたもの):「ふたり構図まとめ」「ポーズ集フリー」などのタグで多数公開されている。作者のプロフィールや説明文に「トレスOK」「商用利用可」と明記されているものに限って使用すること。
- CLIP STUDIO ASSETS(クリスタのアセットストア):「ふたりポーズ」「抱くポーズ集」など、多数の3Dポーズ素材が無料〜有料で配布されており、規約が明確。CLIP STUDIO PAINTで直接読み込める点も便利。
- 髪と形(kamitokatachi.com):3Dモデルで作られた2人のポーズ画像を豊富に公開しており、トレース・商用利用いずれも問題なしと明記されている。恋人、仲間、争いなどカテゴリーも整理されている。
素材の出所を確認するのが基本です。
参考:髪と形「ポーズ 二人(恋人)」カテゴリー — 3Dモデルを使ったトレスOK・商用利用OKの2人ポーズ画像を多数掲載。漫画・イラストの作画資料として活用できます。
2人構図の最大の難しさは、「ポーズそのもの」よりも「どのポーズがどの関係性に合っているか」を理解することです。同じ「ハグ」でも、正面からか後ろからかで伝わる感情がまったく異なります。
まず、代表的な2人ポーズのカテゴリーと、それぞれが持つ感情表現の特徴を整理しましょう。
| ポーズ種類 | 伝わる感情・関係性 | 漫画での活用シーン |
|---|---|---|
| 正面ハグ | 安心感・信頼・親密さ | 再会・告白後・慰め |
| バックハグ(後ろからのハグ) | 独占欲・包容力・甘え | ラブシーン・感情の高まり |
| 並列(横並び) | 対等な関係・友情・連帯感 | 仲間・双子・幼馴染 |
| 身長差ペア | キャラの格差・保護関係 | 先輩後輩・保護者と子ども |
| 対面(向き合い) | 対立・緊張・告白前 | ライバル・修羅場・クライマックス |
| シルエット | 雰囲気・余白・叙情性 | 夕暮れシーン・切ないシーン |
バックハグは「2人の顔を同時に見せやすい」という漫画的メリットがあります。つまり表情で感情を伝えながら、2人の関係性も一枚で描ける、非常に効率的な構図です。初心者が最初に練習するなら、バックハグから始めると描き方のコツをつかみやすいでしょう。
並列構図の場合、ただ「並べるだけ」では印象に残らない絵になりがちです。接触(ハグ・手繋ぎ・肩に頭を乗せる)を加えるだけで親密さがグッと増します。また、2人の大きさに差をつけると、力関係や性格の違いが視覚的に表れます。たとえば明るいキャラを手前に大きく、内向きなキャラを奥に小さく配置するだけで、キャラクター性が伝わる絵になります。
これは使えそうです。
ライバル・対決シーンでは「対角線構図」が効果的です。2人を画面の対角に配置することで、緊張感と力の拮抗が生まれます。画面の左下と右上に配置するイメージで、視線が自然に両者の間を動き、読者が「どちらが勝つのか」と引き込まれる演出になります。
参考:メディバンペイント「複数の人物を描く時の構図&配置アイディア」 — 並列・シンメトリー・大きさに強弱をつけるなど、2人〜複数人の配置アイデアを図解で解説しています。
「トレスOKって書いてあったのに炎上した」という話を聞いたことはないでしょうか。フリー素材を使っていても、使い方を間違えれば炎上・アカウント停止・作品の全削除という事態になりえます。実際に、人気イラストレーターがトレパク(トレース+パクリ)を指摘されてブランドのコラボ契約を失った例もあります。
落とし穴は主に3つあります。
① Pinterestや画像検索の素材は「フリー素材」ではない
PinterestはいわゆるSNS型の画像保存サービスです。そこに掲載されている画像の多くは、元の権利者から許可なくピン留めされたものです。「Pinterest」に掲載されているというだけでは、フリー素材の証明にはなりません。ここから拾った2人構図画像をトレスして公開すると、元の作者から削除要請が来るケースがあります。
② 「トレスOK」でも「商用利用NG」の場合がある
たとえばpixivの個人作家が「トレスOK」と表記している場合でも、「二次配布禁止」「自作発言禁止」「商用利用は別途相談」といった条件がついていることが珍しくありません。同人誌として頒布(販売)する場合は「商用利用」に該当する可能性があるため、事前に作者に確認することが必要です。規約を確認するのが条件です。
③ 「元ネタを明記すればセーフ」は通じない
「元ネタ:〇〇様」と書けば問題ないと思っている人は多いですが、これは逆効果になることがあります。元ネタを明記した上で酷似した絵を公開すると、「このイラストを見て描きました」という事実の自白になります。炎上した際に削除の根拠が明確になるため、かえって指摘されやすくなります。
迷うくらい似ていたら公開しないのが原則です。
安全に公開するには「複数の資料を組み合わせる」「権利クリアな素材のみ使う」「1枚の素材をそのままなぞらない」の3点が基本ルールです。3Dデッサン人形(CLIP STUDIO PAINTのアセットなど)は「作画補助」として明確に認められており、漫画・同人誌での使用も規約内であれば問題ありません。
参考:きゃんばすクラスタ「トレース・模写・パクリの境界線はどこ?SNSで炎上しないための著作権の安全ライン」 — 炎上しないためのチェックリストと、やっていいこと・NGなことを具体例で整理しています。
「トレスOK素材を使っているのに、なぜか絵が浮いて見える」という悩みを持つ人は少なくありません。実は、写真や線画素材をそのままなぞると「リアルすぎてアニメ絵に馴染まない」という現象が起きます。これを解決するのが「構造変換(アタリへの落とし込み)」です。
構造変換とは、写真や素材を「球・箱・円柱などの単純な図形(アタリ)」に一度置き換えてから、そこにキャラクターを描き直す手法です。具体的には次のような流れになります。
| ステップ | 作業内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ①参照 | トレスOK素材・3D素材で2人のポーズを確認 | 体の接触部分・重心・角度を把握 |
| ②アタリ化 | 頭部=球、胴体=箱、手足=円柱でアタリを描く | 「リアル体型」をアニメ体型に変換 |
| ③キャラ化 | アタリの上に自分のキャラクターを描き起こす | 絵柄の統一感を出す |
| ④調整 | 2人の重なりや手の位置を漫画コマに合わせる | コマ割りとの整合性を確保 |
このプロセスを踏むことで、著作権的にも安全で、なおかつ自分の絵柄に馴染む2人構図が完成します。「トレスOK素材をそのままなぞる」のとは異なり、あくまで「構造の参考として使う」という使い方になるため、著作権上のリスクも大きく下がります。
CLIP STUDIO PAINTには3Dデッサン人形機能が内蔵されており、アタリ化のプロセスをソフト内で完結させることができます。POSEMANIACS(無料Webサービス)の3Dポーズデータは、CLIP STUDIO PAINT Ver.3.0以降であれば直接読み込んで使用できます。2人ポーズを調整して、そのままアタリとして使えるので効率的です。
アタリ化が2人構図の核心です。
特に2人が絡み合うポーズ(ハグ・バックハグ・お姫様抱っこなど)は、どちらの腕がどこに回っているのかを正確に把握しないまま描くと、腕が消えたり体が透明になったりする「透け問題」が発生します。アタリの段階で前後関係を色分けしておくと(手前の人物を濃い色で)、この問題を事前に防げます。
フリーの2人構図素材を使いこなせるようになってきたら、次の段階として「感情がちゃんと伝わる構図選び」を意識する必要があります。実は、ポーズの形よりも「手の位置」と「視線の方向」の2点の方が、読者への感情の伝達力に大きく影響します。これは検索上位の記事ではほとんど言及されていない視点です。
手の位置が感情のボリュームを決めます。たとえばバックハグ一つを取っても、腕を「肩に回す」か「腰に回す」かで印象がまったく違います。肩に手を置くと「距離を縮めたい初期段階・緊張・照れ隠し」、腰に腕を回すと「強い独占欲・引き離したくない・情熱的」という感情が伝わります。読者がポーズを見た瞬間に感情を読み取れるかどうかは、この「手の位置の細かい調整」で決まると言っても過言ではありません。
視線の方向も侮れません。2人が同じ方向を見ている構図は「連帯・仲間意識・同じ目標に向かっている」感を出します。逆に視線がすれ違っている(一方が前を向き、もう一方が相手を見ている)と「片思い・気づかれていない感情・もどかしさ」が生まれます。
| 手の位置 | 伝わる感情 |
|---|---|
| 肩に軽く触れる | 緊張・初々しさ・距離感あり |
| 腰に回す | 独占欲・強い親密さ |
| 頬に触れる | 優しさ・保護欲・切なさ |
| 手首をつかむ | 強引・緊迫感・ドラマチック |
漫画の2人構図では「キメ顔の絵だけが一枚絵ではない」という発想の転換も大切です。読者と目が合うポーズ・バッチリ決まったポーズを描くのはもちろんよいのですが、それだけに偏ると表現の幅が狭くなります。「そのキャラクターの日常の一コマを切り取る」という視点で場面を想像するだけで、構図のバリエーションが一気に広がります。
厳しいところですね、でも逆にいえば「関係性の文脈」さえ作れれば、フリー素材の単純なポーズでも感情豊かな一枚に仕上げられます。素材選びに時間をかけすぎるより、キャラクターの心理状態を先に決めてから構図を探す順序にすると、迷いがなくなりスムーズです。
フリー素材を使いこなすなら「ポーズ先」より「感情先」が正解です。