

「empty eyes」だけ入れれば虚ろな表情が出ると思っていたなら、実は時間を大きく無駄にしています。
漫画を描くとき、キャラクターが「心を失った」「希望がなくなった」という状態を視覚的に伝えるには、目の表現が最も重要な要素のひとつです。AIイラスト生成(NovelAI・Stable Diffusion)でこの虚ろな表情を再現しようとするとき、多くの人が最初に試すのが「empty eyes」というプロンプトです。しかし、目的によってはこれだけでは不十分なケースがあります。
虚ろな表情を表現するプロンプトには、主に以下の3つの軸があります。それぞれの意味と出力傾向の違いを理解しておくことで、狙った表情に格段に近づけます。
| プロンプト | 日本語の意味 | 主な視覚効果 | 向いているシーン |
|---|---|---|---|
| empty eyes | 空虚な目・虚ろ目 | 瞳のハイライトが消え、「死んだ魚の目」になる | 精神的消耗・洗脳・諦め |
| hollow eyes | うつろな目・落ちくぼんだ目 | 目の下のクマや暗い陰影が加わり疲弊感が出やすい | 長期的な疲労・絶望の末期 |
| unfocused eyes | 焦点の合わない目 | 瞳の向きがずれてボーッとした印象になる | 呆然・ショック直後・夢見がち |
| dead eyes | 死んだ目 | 生気がなく、まっすぐ前を見ているような無機質さ | 感情を失った状態・トラウマ後 |
| glazed eyes | うわのそらな目・虚ろな光沢目 | 表面だけぼんやり光り、焦点が定まらない | 催眠・夢うつつ・泥酔状態 |
つまり「虚ろな表情」といっても5種類以上の英語表現が存在し、それぞれ出力されるイラストの質感が変わります。
特に「empty eyes」はNovelAIではDanbooruタグとして学習されており、ハイライトが消えた目(いわゆるマグロ目)が生成されやすい傾向があります。一方、Stable Diffusionでは同じプロンプトでも反応が弱めで、強調構文が必要になることもあります。これは知らないと何十回と生成を無駄にする落とし穴です。
参考リンク(empty eyesの効果と使い分けについて)。
【NovelAI V3】感情表現に使える目・瞳・眉タグ一覧|宇田呂井汲 - note
「empty eyes」を入れたのに目のハイライトが消えない——。この失敗は非常によくあるケースです。原因のひとつは、プロンプトの強度(ウェイト)不足です。NovelAIでは`{}`、Stable Diffusionでは`()`を使って強調できます。
具体的な設定例は次のとおりです。
{empty eyes}または{{empty eyes}}(波括弧ひとつで約1.05倍、二重で約1.1倍の強調)(empty eyes:1.3)~(empty eyes:1.5)(数値が高いほど強調が強まる)eye highlight, catchlightを追加するとハイライトを強制的に排除できるウェイト強調だけが解決策ではありません。実際には他のプロンプトとの「コンボ」が最も効果的です。
虚ろな表情を作る代表的なコンボとして広く知られているのが、`empty eyes` + `no pupils`(瞳孔なし)の組み合わせです。これを使うと、ハイライトが消えるだけでなく瞳孔も消失し、単色の虹彩になった「完全に生気のない目」が生成されやすくなります。さらに表情全体を虚ろにしたい場合は、`expressionless`(無表情)や`despondent`(落胆した)を加えると効果的です。
実践的な虚ろな表情コンボの例。
empty eyes, expressionless, parted lipsempty eyes, no pupils, half-closed eyes, expressionlessempty eyes, no pupils, wide-eyed, turn paleglazed eyes, half-closed eyes, drooling, expressionlessdead eyes, hollow eyes, bugs under eyes, frown組み合わせが基本です。単体では弱い場合、コンボを試してください。
注意点として、`no pupils`(瞳孔なし)を追加しても瞳孔がなかなか消えないケースでは、ネガティブプロンプトに`pupils`を追加すると改善することが多いです。ガチャ試行回数(シード値の変更)も効果的な手段になります。
参考リンク(ネガティブプロンプトとハイライト除去の実例)。
目のハイライトを描画しないプロンプトと画像生成結果 - iPentec
漫画において「絶望」は単一の表情ではありません。主人公が少し落胆した場面と、長年の希望を完全に失った場面では、同じ「虚ろな表情」でも全く異なる描写が必要です。この差を意識できているかどうかで、作品の説得力が大きく変わります。
絶望を4段階に分けてプロンプトに落とし込むと、以下のように整理できます。
レベル1(軽度の落胆)では、ハイライトはまだ残っています。この段階では`sad, frown, looking down`のような感情プロンプトに留め、目には手をつけないほうが自然な出力になります。
レベル2(中程度の絶望)になると、ハイライトが小さくなり始めます。`sad, half-closed eyes, empty eyes`を組み合わせると、目が少し死んだ印象になります。漫画的に言えば、目の輝きが半分に減った状態です。
レベル3(重度の絶望)では、ハイライトが消失し表情全体が崩れ始めます。`{empty eyes}, no pupils, frown, furrowed brow, parted lips`の組み合わせが有効です。さらに`turn pale`(顔面蒼白)を加えると、青ざめた印象が加わります。
レベル4(極度の絶望・精神崩壊)は最も扱いが難しいレベルです。`empty eyes, no pupils, wide-eyed, wavy mouth, turn pale`のようなコンボに、背景として`dark background`や漫符表現の`shock lines`を加えることで、視覚的に強烈な崩壊感を演出できます。
感情レベルを段階的に描き分けることで、読者はキャラクターの変化に自然と感情移入できます。
特にNovelAI V3では、同じ`empty eyes`プロンプトでも他の感情プロンプト(`sad`、`despondent`、`shocked`など)との組み合わせで出力の印象がかなり変わることが報告されています。単純に「目のプロンプト」だけを変えるのではなく、表情全体の感情文脈をセットで指定することがポイントです。
参考リンク(絶望を表す漫画の表情描き方とプロンプト活用法)。
絶望を表す漫画の表情の描き方と瞳の輝きで感情表現する方法 - manga.jpn.org
目だけ虚ろになっても、眉・口・体の動きが通常のままでは表情として不自然に見えます。読者に「このキャラクターは壊れてしまった」と直感的に伝えるためには、顔全体のパーツを連動させることが重要です。
眉のプロンプト連動については、状況によって使い分けが必要です。
wide-eyed, constricted pupils(目を見開いて瞳孔縮小)furrowed brow, half-closed eyes(眉間にシワ+半目)expressionless, no pupils(無表情+瞳孔なし)口のプロンプトは「虚ろな表情」においてとても繊細なパーツです。口を小さく描く`no mouth`(点の口)は言葉を失った絶望に、`open mouth`はショックで固まった状態に、`parted lips`(わずかに開いた唇)は生気が抜けた放心状態に向いています。
これが基本的な連動の考え方です。
また、漫画特有の表現として「漫符(まんぷ)」をプロンプトで指示する方法もあります。`anger vein`(怒りマーク)、`sweatdrop`(汗)、`shock lines`(放射線状の衝撃表現)などは日本の漫画文化に根ざしたプロンプトで、NovelAIが得意とする表現です。例えば`empty eyes`に`shock lines`を組み合わせると、「突然の衝撃で心が砕けた瞬間」の絵柄が生成されやすくなります。
体の動きも加えると表情の説得力がさらに増します。`looking down`(下を向く)、`slumped posture`(肩を落としたポーズ)、`trembling`(震え)などをセットで指定すると、顔だけでなく全身で絶望を表現したキャラクターになります。
参考リンク(表情コンボの実例と組み合わせ方)。
すぐに使える!表情プロンプトコンボ集|Kei Aono - note
ここでは、あまり語られない独自視点の活用シーンを紹介します。
「虚ろな表情」は絶望シーンだけに使うものだと思われがちです。しかし漫画の文脈では、虚ろな目を「意図的に感情を隠しているキャラクター」や「無自覚に他者を傷つけている人物」の表現に活用することができ、物語に奥行きが生まれます。これは意外ですね。
具体的には、以下のような使い方が漫画の演出として効果的です。
① クールキャラの「普通の場面」への混入
感情を持たないように見えるキャラクターを描く際、日常的な会話シーンでも`empty eyes`を薄めに使うことで(強調なしで`empty eyes`のみ)、読者に「このキャラクターは何かを抱えている」という違和感を無意識に与えられます。全コマ全力の虚ろ目よりも、さりげなく混入させるほうが漫画として怖さが出ます。
② 回復過程の「希望の兆し」を描く
完全に虚ろな状態から徐々にハイライトが戻っていく過程を表現するには、プロンプトを段階的に変えていくことが有効です。`empty eyes, no pupils` → `empty eyes` → `sad` → `teary eyes` → 通常の目、という順序でコマを生成すれば、心の回復過程をビジュアルで描けます。一連の変化が読者の心を動かします。
③ 「感情なき微笑み」でサイコパス表現
`expressionless`や`empty eyes`に`smile`を組み合わせる(`smile, empty eyes`)と、笑顔なのに目だけ死んでいる、いわゆる「目が笑っていない」キャラクターが生成されることがあります。これはヴィランやサイコパスキャラクターの描写として漫画で非常に効果的な表現手法です。ただし、この組み合わせはNovelAI V3での生成安定性がやや低く、ガチャ試行が必要なこともあります。
④ 夢・回想シーンでの「現実感のなさ」の表現
`glazed eyes`(うわのそらな目)は、キャラクターが夢を見ているような、現実から切り離された状態に非常に向いています。漫画の回想シーンや幻覚シーンで背景に霞をかけつつ`glazed eyes, unfocused eyes`を使うと、視覚的に「今・ここではない意識」を表現できます。
これは使えそうです。
上記の使い方はいずれも、単純に「絶望した顔を描く」以上の演出価値があります。虚ろな表情プロンプトを「感情ツール」としてだけでなく、「物語演出ツール」として捉え直すと、漫画制作の幅が大きく広がります。
参考リンク(表情呪文の総まとめと活用コツ)。
【NovelAI・Stable Diffusion】表情呪文の総まとめ!思い通りの表情を描くコツも紹介 - runrunsketch.net
最後に、虚ろな表情プロンプトを漫画制作で実際に活用する際の実践的なまとめを紹介します。以下のチェックリストをそのまま作業フローに使えます。
🔲 Step 1:目的の感情レベルを決める
虚ろな表情といっても、「軽い放心(レベル1)」から「精神崩壊(レベル4)」まで4段階あります。まずシーンに合った感情レベルを決め、プロンプトの強さを調整します。
🔲 Step 2:メインの目プロンプトを選ぶ
unfocused eyesempty eyesdead eyes or hollow eyesglazed eyes🔲 Step 3:強度を設定し、コンボプロンプトを追加する
`(empty eyes:1.3)`など強調構文を使い、さらに`no pupils`・`expressionless`・`furrowed brow`・`parted lips`などの補助プロンプトを組み合わせます。
🔲 Step 4:ネガティブプロンプトを設定する
`eye highlight, catchlight, pupils`をネガティブプロンプトに追加するだけで、ハイライトが意図せず復活してしまう問題を防げます。
🔲 Step 5:眉・口・体のプロンプトを連動させる
感情のシチュエーションに合わせた眉(`furrowed brow`や`v-shaped eyebrows`)、口(`parted lips`・`open mouth`・`no mouth`)、体(`slumped posture`・`looking down`)を組み合わせると表情に一貫性が生まれます。
🔲 Step 6:漫符で感情を補強する
`sweatdrop`、`shock lines`、`anger vein`、`teardrop`などの漫画記号的プロンプトを加えると、日本の漫画スタイルらしい表現に仕上がります。
生成枚数を増やすことも重要です。表情系プロンプトはランダム性が高く、特に`crazy eyes`・`glazed eyes`・`blank eyes`は5〜10回試行してようやく望む結果が出るケースも珍しくありません。ComfyUIやNovelAIのバッチ生成機能を活用して複数枚を同時生成する習慣をつけると、制作時間の大幅な短縮につながります。
これが漫画制作への活かし方の基本です。プロンプトを一語変えるだけでキャラクターの印象は大きく変わります。ぜひ上記の6ステップを参考に、漫画のシーンに合った虚ろな表情を描いてみてください。
参考リンク(各プロンプトの目視一覧と出力サンプル)。
【Stable Diffusion】表情の呪文・プロンプト一覧(目・顔パーツ編) - mndkblg.com