

トンボ色鉛筆36色で塗った漫画は、消しゴムでほぼ消えません。
トンボ鉛筆の「NQシリーズ」色鉛筆36色セット(型番:CB-NQ36C)は、1970年代から続くロングセラー商品です。黄色い缶ケースが目印で、ホームセンターや文具店、ネット通販など、どこでも比較的容易に手に入ります。価格はおおむね1,800〜2,200円台と、36色セットとしては非常にリーズナブルな部類に入ります。
芯はやや硬め〜中硬の油性タイプで、紙への食いつきがよく、なめらかに色がのります。粉が出にくく手が汚れにくいのも漫画作業中には助かるポイントです。「発色が鮮やかで色がくすまない」とユーザーから高く評価されており、長期間使っても色の品質が変わらないことが「ずっと変わらない鮮やかな発色」というキャッチコピーに表れています。
つまり、コスパと品質のバランスが優れています。
セットに含まれる36色の内訳は、暖色系・寒色系・中性色をバランスよく網羅しており、漫画キャラの肌色表現に使う「うすだいだい(旧称:はだいろ)」はもちろん、空や海を描く青・水色の複数バリエーション、緑系5色、さらに金色・銀色もセットに含まれています。金色と銀色は服のアクセサリーや武器の金属感を表現する際に活躍するため、漫画キャラ着色においては大きなメリットになります。
他社の同価格帯と比べると、三菱鉛筆の「ポリカラー36色」と並ぶポジションです。どちらが優れているかというより、トンボNQは青・緑・紫のカラーバリエーションが豊富という特徴があります。漫画でよく使う「夜の空」「植物の葉」「魔法のエフェクト」などを多彩に表現したい場合、この寒色系の豊富さは実感できるはずです。
36色という数は、漫画着色の初心者〜中級者にとってちょうど良い選択肢です。12色だと肌の陰影色が揃わず苦労しますし、100色以上になると色の管理が大変になります。まず36色でキャラ着色の基礎を身につけるのが効率的です。
参考:トンボ鉛筆公式 色鉛筆NQシリーズ製品ページ
https://www.tombow.com/products/color_pencils_nq/
色鉛筆の発色は「どの紙に描くか」で劇的に変わります。これは案外見落とされがちなポイントです。
色鉛筆の芯はワックス成分と顔料で作られており、紙の繊維に食い込んで色がのる仕組みです。表面がつるつるにコーティングされた光沢紙(グロス系)や一部のクラフト紙は、色鉛筆の芯をはじいてしまい色が定着しにくくなります。漫画を描くとき、「色がきれいに塗れない」と感じたら、まず紙を疑ってみましょう。
トンボ鉛筆自身がテストで推奨している紙の特性は「適度な凹凸があり、ほどよくザラザラしたもの」です。具体的には、上質紙・ケント紙・クロッキー紙などが向いています。一般的なコピー用紙は薄くて描きこむと波打ちやすいですが、発色自体は問題ありません。ラフ段階や練習用途では十分使えます。
漫画原稿用紙に着色する場合は、市販の漫画原稿用紙が上質紙ベースになっているものが多く、色鉛筆との相性は悪くありません。ただしツヤのある印刷加工がされたものは注意が必要です。
| 紙の種類 | 色鉛筆との相性 | 特徴 |
|---|---|---|
| 上質紙(漫画原稿用紙含む) | ◎ | 色のりよく、発色安定 |
| ケント紙 | ◎ | ツルツルで細かい描写に向く |
| クロッキー紙 | ○ | 少しザラつきあり、温かみのある質感に |
| コピー用紙 | △ | 薄くて波打ちやすいが発色は問題なし |
| 光沢コーティング紙 | × | 色をはじきやすく不向き |
紙目がある程度ザラザラしているほど、色が深みを持ってのります。ただし漫画キャラの肌や目など細かい描写が多い場合は、やや滑らかな面の紙のほうが精密な塗りに向いています。描くイラストの雰囲気に合わせて選ぶのが原則です。
参考:トンボ鉛筆FunArtStudio「画材別おすすめの紙 鉛筆・色鉛筆編」
https://tombow-funart.com/topics/tools/11964/
色鉛筆での漫画着色が「薄くてのっぺりした印象になる」という悩みは非常によくあります。原因のほとんどは、重ね塗りの不足と筆圧の誤りです。
重ね塗りが核心です。
色鉛筆は1度だけ塗っても色が十分に乗りません。広い範囲の均一塗りでも、最低2〜3回は重ね塗りが必要です。最初の1塗り目は弱い筆圧で薄く色をのせ、全体の下地を作ることを意識します。2〜3塗り目以降で徐々に筆圧を上げながら色を重ね、深みを出していきます。
塗り方の基本ルールは以下の通りです。
「最初から強い筆圧で塗ってはいけない」という点は特に重要です。最初にマックスの濃さで塗ってしまうと、後から重ねる色が乗りにくくなり、グラデーションを作ろうとしても境界が不自然に固まってしまいます。薄く少しずつ積み重ねるイメージで進めましょう。
単色グラデーションは、同じ色を使って塗り重ねる回数を増やすことで作れます。一番濃くしたい部分を中心に塗り重ね、薄くしたい端へ向かうにつれ筆圧を落としていく方法が基本です。慣れてきたら2色・3色を混ぜる混色グラデーションに挑戦してみましょう。たとえば肌の影を作る場合は、「うすだいだい→だいだい→薄紅」の順で重ねると自然な陰影になります。
参考:イラスト・マンガ教室egaco「色鉛筆の塗り方3つの基本」
https://comic.smiles55.jp/guide/11329/
漫画キャラ着色の中で特に難しいのが「肌・髪・瞳」の3パーツです。ここを仕上げられると、全体の完成度が一気に上がります。
まず最初に色ラフを作るのがおすすめです。
完成イメージを紙に軽く書き出しておくと、「途中で色の方向性を見失う」という失敗が減ります。線画のコピーを取り、大まかに色を置いてから本番に進む流れが安全です。
【肌の塗り方】
下地として「うすだいだい」を弱い筆圧で全体に薄く広げます。次に、「だいだい」で頬・鼻・あご下など影になる部分を重ね塗りします。さらに濃い影が必要な部分には「薄紅」を重ね、陰影の差をつけます。全体の仕上がりはポイントごとに全体バランスを確認しながら塗り込む意識が大切です。
【髪の塗り方】
ハイライト(光が当たる部分)の位置を最初に決めておきます。ハイライト周辺は塗り残すか、弱い筆圧にとどめます。根本や毛束の影になる部分から順に色を重ね、全体を3〜4回塗り重ねて艶感を出します。金・茶系の髪なら「黄色→だいだい→茶系→こげ茶(影)」の順が目安です。
【瞳の塗り方】
瞳は漫画キャラの印象を決める最重要パーツです。まず白のハイライト位置を意識して塗り残し、「水色→青→藍色(または紫)」の順で重ねてグラデーションを作ります。上部を濃く、下部に向かって薄くなるグラデーションが漫画的な瞳の表現として自然です。36色セットには複数の青・紫系が揃っているため、この表現を作りやすいのがトンボNQの強みです。
これが基本の流れです。最初は部分ごとに集中して塗り、全体のトーンを最後に合わせるように仕上げていくと統一感が出ます。
色鉛筆で漫画着色を続けていると、「色がもう乗らなくなった」「塗り面に白いモヤがかかった」「芯が急に折れる」といった問題に直面します。これらはほぼ全て、対処法が存在します。
失敗① 重ね塗りしすぎて色がのらなくなった
紙の表面には細かい凸凹(紙目)があり、色鉛筆の顔料はこの凸凹に引っかかって色がのります。ところが重ね塗りを繰り返すと、やがて凸凹がワックスで埋まりツルツルになり、それ以上色が乗らなくなります。
対処法は「パステルフィキサチフ(定着剤スプレー)」を軽く吹きかけること。表面に新たな凹凸ができ、もう一段階重ね塗りが可能になります。フィキサチフは画材店やネット通販で入手でき、1本あると安心です。
失敗② ワックスブルームが起きた
重ね塗り後、しばらく経ってから塗り面が白くくすんでくることがあります。これが「ワックスブルーム」です。油性色鉛筆はワックス成分が時間とともに表面に浮き上がる現象で、特にトンボNQのような油性タイプでも起きることがあります。
白くなった部分をティッシュや柔らかい筆でそっと拭き取ると元の色に戻ります。根本的な対策にはフィキサチフの使用が効果的です。
失敗③ 芯が頻繁に折れる
削り過ぎて芯を尖らせすぎると折れやすくなります。特に色鉛筆は鉛筆よりも芯が柔らかいため、使う前に削った後、一度試し書き用紙で少し丸めてから使うとよいでしょう。また電動シャープナーを使う場合、削りすぎに注意が必要です。手動の鉛筆削りで「ちょうどよく尖った状態」で止めるのが安全です。
失敗④ 消そうとしたら色が残った
これは失敗ではなく色鉛筆の仕様です。ワックス成分が紙繊維に染み込む性質上、完全には消えません。薄く残った色は修正として上から白の色鉛筆を重ねるか、薄い塗りのうちにねり消しで吸い取るのが現実的です。大事なのは「最初は薄く、徐々に濃く」という鉄則を守り、いきなり濃く塗ってしまわないことです。
参考:画材マニアのアート・ラボ「ワックスブルームを取り除く方法」
https://art-lab.style16.net/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%8A%E9%99%A4%E3%81%8F/
多くの漫画着色初心者がやりがちなのが、「毎回36本をガサガサ探しながら塗る」という作業です。実は、これが着色時間のロスになります。
既製品の缶や色番号順に並べた状態では、「肌に使う色」「髪に使う色」「服に使う色」がバラバラに配置されています。キャラを塗るたびに使う色を探す時間が積み重なると、1枚の着色に余計な10〜15分を消費することもあります。
解決策はシンプルで、「使用頻度の高い色をパーツ別にグループ化して管理する」方法です。具体的には、ロールケース型の収納(トンボNQにはロールケース入りモデル「CR-NQ36C」がある)を活用するか、100円ショップのペン立てに「肌用」「髪用」「目・ハイライト用」「服・背景用」と分けて立てておくだけでOKです。
漫画着色でよく使うグループの目安は以下の通りです。
もちろんキャラクターのカラーリングによって変わりますが、「次に使う色を手の届く場所に置いておく」だけで集中力が途切れずに塗り進められます。
この「作業環境の整理」は、テクニックと同じくらい着色の仕上がりと速度に影響します。道具選びだけでなく、道具の置き方まで意識するのが上達の近道です。
また、色鉛筆の本数が36本に増えてから初めて「色見本帳(カラーチャート)を手作りする」ことを強くおすすめします。自分の手で全色を紙に塗ってメモしておくと、「欲しい色がどこにあるか」が一目でわかります。これを1枚作るだけで、以降の着色作業が格段にスムーズになります。手間は最初の1時間だけです。