

真っ白なのに、たてがみは脂身ではなく70%がゼラチン質です。
「たてがみ」と聞くと、馬の首すじに生えているあの長い毛を思い浮かべる方が多いはずです。もちろん毛は食べられませんが、その毛が生えている部分の真下にある皮下脂肪の塊——それが馬刺しでいう「たてがみ」の正体です。場所でいえば馬の首筋、後ろ側から肩にかけての皮と肉の間に位置する脂肪層のことを指します。
この部位は「コウネ」「コーネ」「こうね脂」とも呼ばれており、店や地域によって呼び方が変わります。本場の熊本では「たてがみ」と呼ぶのが一般的ですが、通販サイトでは「コウネ」と表記されていることも多く、どちらも同じ部位を指しています。
注目すべきは、1頭の馬から取れる量の少なさです。馬1頭あたりから取れるたてがみはわずか約4〜5kg程度で、これはハガキ約50枚分の重量に相当するイメージです。馬全体の体重が数百kg以上あることを考えると、いかに小さな割合かがわかります。希少部位と呼ばれる理由がここにあります。
見た目は真っ白で、まるで脂の塊のように見えます。しかし実際の成分は異なります。
| 成分 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| ゼラチン質(コラーゲン) | 約70% | コリコリとした食感のもと |
| 脂質 | 約30% | 甘みととろける口どけのもと |
脂質よりもゼラチン質の方が多い、というのが重要なポイントです。体内脂肪とは構造的に異なるため、牛脂のような重さやべたつきがなく、後口がスッキリしているのはこのためです。つまり、「白いから脂っこい」という先入観はまったく当てはまりません。
また、たてがみが生えている首部位でも、皮下脂肪部分以外の筋肉部分は「ネック」と呼ばれ、全く異なる食感・味わいになります。同じ首まわりでも、皮下脂肪か筋肉かで別の部位になるわけです。この違いを知っておくと、注文のときに迷わずに済みます。
参考:たてがみ(コウネ)の部位や成分、味わいについて詳しく解説しています。
【希少部位】馬刺しのたてがみとは?馬刺し専門店が教える!味・食べ方・美容効果まで徹底解説! – 菅乃屋
たてがみを初めて口にした人が必ずといっていいほど驚くのが、その食感のギャップです。見た目からは「ぶよぶよした脂身」をイメージしがちですが、実際に噛んでみると「コリコリ」という独特の歯ごたえがあります。これがゼラチン質の多さからくるものです。噛むほどに甘みと旨味が広がり、最後にじんわりとした脂の甘さが口の中に残ります。
さらに、馬の脂肪は他の家畜に比べて融点が低いのが大きな特徴です。牛脂の融点が約40℃以上なのに対し、馬の脂は人間の体温(約36〜37℃)に近い温度でとろけ始めます。口に入れた瞬間にスーッと溶けるような感覚があるのはこのためで、しつこさを感じないまま旨味だけが残るわけです。
食感をまとめると、次の3段階で変化します。
一方、カロリーについては注意が必要です。馬刺しといえば「低カロリー」のイメージがありますが、それは赤身の話です。たてがみは脂質とゼラチンが主体のため、100gあたり約750〜900kcalと非常に高カロリーになります。赤身の馬刺しが100gあたり約110kcal前後であることと比べると、その差は約7〜8倍です。
高カロリーが気になる場合はポーションを意識することが大切です。
一般的な提供量は1人前あたり40〜60g程度となっており、その場合のカロリーは約300〜540kcal程度に収まります。美味しさを楽しみながらも食べすぎに気をつければ、特別なシーンの贅沢として十分に楽しめます。
参考:たてがみのカロリーや栄養成分、他部位との比較を詳しく知るなら以下のページが参考になります。
馬刺しの希少部位タテガミとは?気になるカロリーや食べ方を解説 – 馬たらし
脂の塊に見えるたてがみですが、栄養面では意外なほど多彩な成分が含まれています。先に触れたとおり、成分の約70%をゼラチン質(コラーゲン)が占めています。コラーゲンは人体のタンパク質のうち約30%を構成する重要な成分であり、肌の弾力・関節の滑らかさ・骨の強さに直接関わっています。たてがみを食べることで、このコラーゲンを体内から補給できるわけです。
含まれている主な栄養素を整理すると、次のようになります。
美容を意識する方にとっては、コラーゲンを食事から手軽に補給できる点が魅力的に映ります。コラーゲンサプリメントの相場は1ヶ月分で2,000〜5,000円程度かかることが多いのに対し、たてがみ馬刺しは美味しい食事としてコラーゲンを補給できるわけです。実用面でのメリットといえます。
ただし一点、注意が必要です。
コラーゲンを食べても直接肌に届くわけではなく、消化・分解された後にアミノ酸として吸収されます。それでも良質なアミノ酸として体内で活用されることに変わりはなく、継続的に摂取することで健康・美容のサポートが期待できると言われています。過大な期待は禁物ですが、食事の一部として取り入れる価値は十分にあります。
また、馬肉全体に共通する特徴として、牛肉の脂肪分の約11分の1という低脂質な点も見逃せません。赤身部分は低脂肪・高たんぱくで知られており、たてがみと組み合わせることでバランスよく馬肉の栄養を楽しめます。
通販で購入したたてがみは冷凍ブロックの状態で届くのが一般的です。この冷凍状態からどのように解凍するかで、食感と旨味が大きく変わります。適切な方法を守ることが、美味しく食べるための最重要ポイントです。
解凍の基本は「半解凍」です。完全に解凍してしまうと柔らかくなりすぎてスライスしにくくなり、食感も損なわれやすくなります。外側が少しやわらかくなり、内側に芯が残っている状態——いわゆる半解凍の段階でスライスするのがベストです。
推奨される解凍方法は以下の2つです。
電子レンジでの解凍は厳禁です。
急激な温度変化でゼラチン質が溶け出し、食感がまったく別物になってしまいます。また、冷蔵庫での自然解凍は時間がかかりすぎる場合があり、完全解凍になりやすいため、たてがみには向いていません。
カットする際の厚みは1.5〜2mm程度が黄金律とされています。これはA4用紙の厚み(約0.1mm)の約15〜20倍、つまりクレジットカードの厚み(約0.76mm)の約2倍強のイメージです。薄すぎると食感が失われ、厚すぎると噛み切りにくくなります。包丁は引き切りにするとキレイに仕上がります。
解凍・カットのコツをまとめると次のとおりです。
| ポイント | 具体的な方法 |
|---|---|
| 解凍方法 | 氷水に5〜10分浸けて半解凍 |
| 解凍のサイン | 外側がやわらかく、中心に芯が残る状態 |
| カットの厚み | 1.5〜2mm(薄め) |
| 包丁の使い方 | よく研いだ刃で引き切りにする |
| NG行為 | 電子レンジ解凍・完全解凍後のカット |
参考:解凍方法の詳細と部位別の食べ方について確認できます。
たてがみ単体でももちろん美味しいのですが、馬刺し専門店が口を揃えておすすめするのが「赤身との組み合わせ」です。真っ白なたてがみと鮮やかな赤い赤身を交互に盛り付けると、まさに紅白のコントラストが生まれ、見た目にも美しい一皿になります。漫画の食事シーンや料理の描写としても、この白と赤のコントラストは非常に映えます。
味わいの面でも、組み合わせの効果は明確です。たてがみ単体ではゼラチン質の甘みとコリコリ感が際立つ一方、赤身のあっさりとした旨味と組み合わさることで「霜降り馬刺し」に近い、大トロのような濃厚な味わいになると言われています。1+1が2以上になる組み合わせです。
薬味との相性も重要なポイントです。
タレは馬刺し専用醤油が最もおすすめですが、専用タレがない場合は九州産の甘口醤油が代替として優れています。一般的な濃口醤油だとたてがみの繊細な甘みが消えてしまうことがあるため、甘みのある醤油を選ぶのがポイントです。
また、たてがみは炙り食べも絶品です。薄くスライスしたものをバーナーや炙りグリルで表面だけさっと炙ると、外側にわずかな香ばしさが生まれ、内側のとろける脂がより際立ちます。塩と柚子胡椒だけのシンプルな味付けで食べると、素材の甘みを最大限に楽しめます。炙り用には厚さ3〜4mm程度の少し厚めにカットするのがコツです。
食べ方のバリエーションまとめです。
| 食べ方 | おすすめポイント | 合わせる薬味・タレ |
|---|---|---|
| 赤身と重ねて | 大トロ風の濃厚な味わいに | 馬刺し専用醤油+にんにく |
| たてがみ単品 | コリコリ食感と甘みを純粋に楽しむ | 生姜・大葉・甘口醤油 |
| 軽く炙って | 香ばしさとろける脂の甘みが同時に | 塩+柚子胡椒 |
赤身とのセット商品は通販でも多く展開されており、初めてたてがみを試す際は赤身とのセットを選ぶと両方の良さを確かめやすいです。熊本の馬刺し専門店各社から冷凍真空パックでの取り寄せが可能で、品質管理された状態で届きます。
参考:赤身とたてがみの組み合わせ方や各部位の特徴についてはこちらも参考になります。