

入り抜きと筆圧を両方オンにするだけで、線が思い通りにならない時間が何十分も続きます。
デジタルで漫画を描くとき、「線がのっぺりして味気ない」と感じたことはないでしょうか。その原因のほとんどが、入り抜き設定の未活用にあります。
「入り」とは線の描き始め部分のことで、「抜き」とは線の描き終わり部分のことです。アナログで付けペンを使う場合、ペン先を紙に当てる力の加減によって自然に線の太さが変わり、描き始めは細く、途中で太くなり、描き終わりでまた細くなります。このニュアンスがいわゆる「プロらしい線」の正体です。
クリスタでは、この入り抜きをソフト側が自動で描画後に付与する仕組みになっています。つまり、実際にペンを動かしている最中ではなく、描き終わったタイミングで線の端部分を変化させているのです。意外ですね。
ペンタブや液タブの筆圧感知がないデバイス(例:マウスやiPadの指操作)でも、この設定を入れることでアナログに近い線の強弱を出せます。これが入り抜き設定の最大のメリットです。線の太さ以外にも濃度や散布効果なども変化させられます。つまり、入り抜きは「線を細くするだけの機能」ではないということです。
入り抜き設定があることで、たとえば髪の毛の流れや服のしわの柔らかさ、キャラクターの輪郭の躍動感など、漫画的な表現の幅が大きく広がります。逆に均一な太さが必要な背景のトーン境界や文字の縁取りには、入り抜きをオフにする方が適しています。これは使い分けが条件です。
参考:クリスタ公式のペン・ブラシツール入り抜き設定ガイド(設定項目の概要が確認できます)
ペン・ブラシツールの入り抜き設定 – Clip Studio公式サポート
まずサブツール詳細ウィンドウを開くことが最初のステップです。手順を見ていきましょう。
設定を行うには、まず対象のペンや筆ツールを選択した状態にしてください。そのうえで、画面上部のメニューから「ウィンドウ」→「サブツール詳細」と進むか、ツールプロパティの右下にある🔧スパナマークをクリックします。どちらの方法でも同じ画面が開きます。
サブツール詳細ウィンドウが開いたら、左側のカテゴリ一覧から「入り抜き」を選びます。右側に入り抜き関連の設定項目が表示されます。ここが入り抜き設定のメイン操作画面です。
設定できる主な項目は以下のとおりです。
| 項目名 | 内容 |
|---|---|
| 入り抜き(影響先) | 何をどう変化させるか選択(ブラシサイズ・濃度など) |
| 指定方法 | 長さ指定 / パーセント指定 / フェードの3種類 |
| 入り | 描き始め側の変化範囲をオン/オフと数値で指定 |
| 抜き | 描き終わり側の変化範囲をオン/オフと数値で指定 |
| 速度による入り抜き | 描く速さで入り抜きの範囲が自動変化 |
入り抜きの設定をツールプロパティ上に表示させたい場合は、サブツール詳細ウィンドウ内の各項目の左側にある「目のマーク(表示アイコン)」をクリックするとツールプロパティに追加表示されます。毎回サブツール詳細を開かなくて済むので便利です。これは使えそうです。
また、初期設定のGペンには入り抜きが設定されていない場合があります。「なんで線が細くならないんだろう?」と悩んでいる場合、入り・抜きのチェックが外れているだけのケースがほとんどです。まずチェックの確認から始めましょう。
参考:入り抜き設定の詳細な手順解説(TourBox公式ブログ。設定画像つきで確認しやすいです)
クリスタの入り抜きとは?設定方法・項目の意味を解説 – TourBox
指定方法を間違えると、短い線だけ入り抜きが消えるという現象が起きます。これは地味に困りますね。
「長さ指定」は、線の長さに関係なく固定の長さで入り抜きを表現する方法です。たとえば「抜き:5mm」と設定すると、どんな長さの線でも描き終わりの5mm分が細くなります。漫画の主線のように長短が混在するシーンでは、短い線でも長い線でも同じ入り抜きの幅になるため、線の統一感が出やすいです。
「パーセント指定」は、描いた線全体の長さを100%として、その割合で入り抜き範囲を決める方法です。たとえば「抜き:30%」なら、短い線は短い分だけ、長い線は長い分だけ30%の範囲が細くなります。
比較するとこのようになります。
| 指定方法 | 入り抜き範囲の決まり方 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 長さ指定 | 線の長さに関係なく固定長さ | 主線・輪郭線(統一感を出したい) |
| パーセント指定 | 線の長さに比例した割合 | 柔らかい曲線・自然な線の流れ |
| フェード | 描き始めから徐々に細くなり最小値に到達後キープ | 草や毛並みなど途中で細くなる線 |
フェードは少し独特の動きをします。描き始めから徐々に細くなっていき、設定した長さのところで最小値に達します。そのまま描き続けると最小値のまま線が続きます。毛の流れや草むらの輪郭など「先が細くなるけどそのまま続く線」を描くのに適しています。
漫画のペン入れ用途では、まず「長さ指定」から始めてみることをおすすめします。設定値の意味が直感的にわかりやすく、線の長さに惑わされないためです。長さ指定が基本です。
入り抜きは「線を細くするだけ」だと思っていると、表現の選択肢を7割以上捨てていることになります。
「入り抜き影響先設定」とは、入り抜きによる変化をどのパラメータに適用するかを選ぶ項目です。デフォルトでは「ブラシサイズ」のみにチェックが入っていますが、実は全10項目にわたって選択肢があります。
主な項目を紹介します。
複数の項目を同時にチェックすることも可能です。たとえば「ブラシサイズ+ブラシ濃度」を同時にオンにすると、線の端が細くなりながら同時に薄くもなり、よりアナログな墨の乗り方に近い表現が得られます。これは漫画のペン入れにおいて、より手書き感のある線質を求める方に特に有効なテクニックです。
それぞれの最小値は個別に設定可能で、「0」に近づけるほど変化量が大きくなります。0に設定すると線の先端で完全にそのパラメータが消えた状態になります。試しながら最小値を変えてみると、意外な表現に出会えることがあります。
参考:入り抜き影響先設定の全10項目を解説した記事(各パラメータの効果がまとめられています)
クリスタの入り抜き影響先設定の全10項目の効果・意味まとめ – note(山本電卓)
入り抜き設定を完璧にしたはずなのに「描き味がおかしい」と感じるなら、ほぼ筆圧設定との競合が原因です。
クリスタには入り抜き設定のほかに、筆圧によってブラシサイズが変わる「筆圧感知」設定も存在します。両方が有効な状態だと、線の端はソフト側の入り抜きで変化し、さらに筆圧でも太さが変わるため、二重に影響が重なって予期しない線になることがあります。特に入り部分が「ぷちっ」と変な形になるケースや、どんな強さで描いても同じような太さになってしまう場合は、この競合が疑われます。
解決策は「どちらをメインに使うか」を決めることです。
「速度による入り抜き」は不確定要素が大きいため、線の安定を求める漫画ペン入れ作業中はオフにしておくのが無難です。ゆっくり描くと入り抜きが弱くなり、線ごとに仕上がりが変わってしまいます。安定した線が条件です。
また、入り抜き設定の変更によって描き味が変わったときは、まず筆圧設定を一度オフにして確認してみてください。原因の切り分けがしやすくなります。ペンごとにツールを複製しておき、設定違いのペンを使い分けるとさらに効率が上がります。
参考:クリスタの筆圧設定と入り抜き設定の2つのアプローチを解説(実際の描き味の違いも紹介)
クリスタでの入り抜き設定〜ペンのタッチをアナログっぽく変える – reach-rh.com
設定したはずなのに線が変わらない場合、ほとんどは5つのどれかが原因です。
よくあるトラブルと確認箇所をまとめます。
それでも解決しない場合、他のペンで同じ設定を試してみると問題の切り分けになります。クリスタ初期設定のGペンをコピーして試すのが手っ取り早いです。
「入り抜きなし」の状態になっていないかも確認が必要です。指定方法が「入り抜きなし」に設定されていると、チェックを入れても一切変化しません。これは盲点になりやすいので注意が必要です。
線のトラブルで行き詰まったとき、設定の変更前後で何が変わったかを記録しておくと解決が早まります。ツールを複製して変更を加えれば、元の状態と比較しながら試せるので安心です。ツールの複製は必須です。
参考:入り抜きが反映されないケースの原因と対処法(クリスタ公式サポートページ)