
棒人間を描くときに最も重要なのが、頭部を基準とした比率の把握です。
参考)キャラなんて描けない… え?描ける!?——『「棒人間」からは…
一般的な成人の棒人間は、頭部を1とした場合、全身で約7〜8頭身の比率になります。具体的には、頭部から首までが1頭身分、そこから腰までが約2.5〜3頭身分、腰から足の付け根までが約1頭身分、太ももから膝までが約1.5頭身分、膝から足先までが約1.5頭身分という配分です。
参考)骨と比率を意識しよう! 人体を描くために役立つポイント
腕の長さは、肩から肘までが約1.5頭身分、肘から手首までが約1.5頭身分で、腕を下ろした状態では手首がちょうど腰の位置にくるのが自然なバランスとなります。
参考)人体の作画【人体のバランス】|Jo
初心者の方によくある失敗例として、腕の位置が低すぎて首が長くなってしまうケースや、逆に高すぎて首がなくなってしまうケースがあります。肩の先に腕がついていることを意識し、頭を○で描いたあとに漢字の「大」を描いて練習するのが効果的です。
参考)絵心がなくても伝わる! 職場のコミュニケーションが円滑になる…
頭身比率の参考表を以下にまとめました。
部位 | 比率(頭身) | 位置の目安 |
---|---|---|
頭部 | 1 | 基準点 |
首〜腰 | 2.5〜3 | 体の中心部 |
腰〜足の付け根 | 1 | 四等分目がお尻 |
太もも〜膝 | 1.5 | 脚の中間点 |
膝〜足先 | 1.5 | 地面まで |
肩〜肘 | 1.5 | 腕の上部 |
肘〜手首 | 1.5 | 手首が腰の位置 |
棒人間を自然に見せるためには、関節の正しい配置と可動域の理解が不可欠です。
人体の主要な関節は、首、肩、肘、手首、腰、膝、足首の7箇所で、これらを適切な位置に配置することで、リアルな動きを表現できます。特に重要なのは、胴体を「頭」「胴体」「腰」の3つのパーツに分けて考えることです。
参考)ちょっとカッコイイ棒人間の描き方
イラストプレゼン研究所の河尻光晴氏が提唱する「ちょっとカッコイイ棒人間」の描き方では、従来の棒人間から「頭」「胴体」「腰」を切り離し、その間に「首」を表現する縦線と「背骨」を表現する縦線を描き加えるだけで完成します。この方法により、首の動き、肩の動き、腰の動きがより具体的に表現可能になります。
参考となる専門的な描き方については、以下のサイトが詳しく解説しています。
ちょっとカッコイイ棒人間の描き方 - イラストプレゼン研究所
関節の配置で特に注意すべきポイントは、骨は棒状ですが一直線な骨は存在しないということです。腕や脚は若干弧を描くようにすると柔らかさが出しやすくなります。
背骨についてもよく忘れがちですが、みぞおち付近から骨盤の回転の力の影響を受けることを意識しましょう。背中を曲げる時はみぞおち付近を骨盤からのラインよりも強めに曲げると自然に見えます。
棒人間に肉付けする際は、単純に線の周りに肉を足すのではなく、肉の厚みを考慮した配置が重要です。
参考)棒人間のような簡易アタリに上手く肉付けができない理由
棒人間にそのまま肉付けをすると、体のバランスが崩れてしまいます。首や腕の太さ、体の厚みなどが加味されていないからです。棒人間は、あの線だからこそ成り立っているバランスなので、それをアタリとして肉付けすれば、その厚み分のズレが出るのは当然なのです。
肉付けの基本手順は以下の通りです。まず棒人間で大まかなポーズを描いたら、頭部の輪郭から描いていきます。次に顔のパーツを顔の十字に合わせて配置します。そして体型を完成形にあわせて肉付けをしていきます。
参考)https://gihyo.jp/assets/files/book/2022/978-4-297-12834-0/9784297128340-01.pdf
体型の描き分けも肉付けで表現できます。例えば「走る」ポーズの棒人間を使って、痩せ体型と太め体型を描き分ける場合、肉の幅を変えれば体型が変わります。シルエット表現として捉えることで、同じ棒人間のポーズから多様なキャラクターを生み出せるのです。
肉付けの際に便利な方法として、体の一番ふくらんでいる部分やくぼんでいる部分の円周を先に描いておくと、後で衣装を着せる時のガイドになります。
参考)人体のアタリの取り方講座 ~見えない部分の理解を深めよう~
より詳しい肉付けの手順については、技法書出版社の公式資料が参考になります。
「棒人間」からはじめる キャラの描き方 超入門 - 技術評論社
動きのある棒人間を描くには、重心の理解とコントラポストの活用が鍵となります。
参考)体のアタリの描き方はコツを掴めば劇的に上達する!初心者向け徹…
重心とは、体の軸になる場所、体重を支えるとき重さの中心となる点のことです。直立ポーズのときは体の中心線と左右の足の中心が真っすぐに並びますが、片足に体重を乗せたポーズの場合はその足が全体重の支えになるので、足の点と体の中心線が縦に並ぶようになります。
コントラポストとは、肩と腰の関節を左右非対称にする技法で、線で結ぶと八の字に傾き、体の中心線を引くと緩やかなS字のラインになります。これに対して、肩と腰の関節が左右対称で一直線になると、安定感はありますが動きのない棒立ちの印象になってしまいます。youtube
走る棒人間を描く際の基本ポーズでは、左右の手足が交互に動くイメージを最もシンプルに表現します。パンチなどのアクションを描く場合は、体に前後の腕が交差している瞬間を描くと、上半身がちゃんと半回転してズゴンとパンチを叩き込んでいるように見えます。
参考)棒人間で動かそう~ドット絵アニメ覚書|鮭川斗蘭@ドット絵つく…
体全体の流れを意識することも重要です。体のてっぺんから脚先までを大まかに線でつなげたときに、ゆるやかなS字やカーブを意識した形になると、自然なポーズになります。人間の体は関節が多く、自然なポーズは体全体の関節が動くような柔軟な形になるのです。
棒人間でも豊かな感情表現が可能で、そのポイントは「動作×感情×表情」の組み合わせにあります。
参考)絵心なくても大丈夫!誰でも描ける「棒人間」
多くの方が感情表現をしようとする際、「喜怒哀楽」という基本的な感情だけで表現しようとしますが、この大まかな分類での捉え方だけでは、感情の微妙な違いが描き分けられません。
参考)棒人間と感情の「言語化」
棒人間の微妙な表情の変化や体のポーズを変えることで、「ただ嬉しい」ではなく、「ワクワクしている嬉しさ」や「安堵した嬉しさ」といった、より具体的な感情が表現できるようになります。
顔の表情は、ほんの少し線の長さや角度を変えるだけで感情表現が豊かになります。例えば、笑顔を描く場合は、ほっぺたに「//」と2本線を入れ、口を開けば笑顔のできあがりです。
同じ「動作」でも、顔のパーツを変えて「表情」を描き分けるだけで、そのイラストから伝わる「感情」は全く違うものになります。線と形の組み合わせ、動作と表情の組み合わせのパターンを知っているだけで、様々な棒人間があなたの伝えたいことを表現してくれるのです。
参考)https://ameblo.jp/pt-kmitu/entry-12650538116.html
Yahoo!ニュースのイラストレーター・カモ氏による解説では、キャラクターをかわいく描くポイントとして、全身の頭と体のサイズを約1:1にすることが紹介されています。
参考)『かわいい棒人間』の描き方〜イラストレーター カモ流〜(カモ…
感情表現の詳細については、以下のサイトが参考になります。
棒人間と感情の「言語化」 - イラストプレゼン研究所
棒人間を練習することで、感情の微妙な違いに気づき、それを表現する能力を高めることができます。これは自分自身や他人の感情をより深く理解し、豊かな人間関係を築くための重要なステップとなるでしょう。