アクションシーンの描き方|迫力ある構図とパースで魅せる漫画技法

アクションシーンの描き方|迫力ある構図とパースで魅せる漫画技法

漫画のアクションシーンを魅力的に描くには、構図・パース・動きの表現が重要です。プロが実践する効果線やポージングの秘訣を知りたくありませんか?

アクションシーンの描き方

この記事でわかること
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基本の5パターン構図

構え・タメ・攻撃・インパクト・決めポーズの流れをマスター

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迫力を生むパース技法

オーバーパースと画角の使い分けで躍動感アップ

効果線と描き文字の実践

スピード感を演出する集中線・流線のコツ

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アクションシーンの構図は5つのパターンで考える

漫画のアクションシーンには、実は基本となる5つの構図パターンが存在します。「構え」「タメ」「攻撃」「インパクト(破壊)」「決めポーズ」という流れを意識するだけで、バトルシーンの構成が劇的にスムーズになるんです。
参考)パターンを当てはめるだけ! 悩まずにアクションシーンを描く方…

プロの漫画家は、どの構図を描くのかを事前に決めてから作業に入ります。これにより「何を描けばいいか分からない」という迷いが減り、制作時間の短縮にもつながります。​
格闘家キャラなら直接的な打撃、剣士なら振りかぶりから斬撃、飛び道具使いなら溜めから放出というように、キャラクターの戦闘スタイルに合わせて5パターンを使い分けるのがポイントです。特に飛び道具系は「攻撃」と「インパクト」の順番が逆になる特徴があるので、注意が必要なんですね。​

アクションシーンの動きは「タメ」と「開放」で表現

迫力あるアクションを描くには、力の流れを視覚化する「タメ」と「開放」の概念を理解することが重要です。タメは「縮む」「閉じる」「曲げる」といった内向きの力、開放は「伸びる」「開く」「反る」という外向きの力を表現します。​
本気度の高い攻撃ほど、タメと開放のコントラストを大きくするのがコツです。例えば軽いパンチなら片腕だけの開放で表現できますが、全力攻撃なら全身を使った大きな開放と、それを支えるための下半身のタメが必要になります。​
ただし注意点として、タメと開放のメリハリをつけることが大切です。中途半端に曲げたり伸ばしたりすると、動きの強さが伝わりにくくなってしまいます。関節はしっかり伸ばしきる、曲げるときはしっかり曲げるという意識が、説得力のあるポーズを生み出します。​

アクションシーンでわかりにくさを解消する動作分割テクニック

「アクションシーンがわかりにくい」と言われる原因の多くは、1つのコマに複数の動作を詰め込みすぎることにあります。プロの漫画家オニグンソウ先生によると、「回避」「殴る」といった各動作を別々のコマに分けることで、読者に動きの流れが伝わりやすくなるそうです。
参考)【アクションシーンをレベルアップ!】オニグンソウ先生に学ぶ演…

実際の制作では、見開きで一番見せたいアクションを最初に決めて、そこまでの道筋を逆算して考えるアプローチが効果的です。見開きのインパクトを超える動作は先に描かないようにし、打ち合いは最大でも2回までに抑えることで、単調さを避けられます。​
動画を参考にする際も、静止画をそのまま模写するのではなく、一連の動作から自分で切り取ることでオリジナリティが生まれます。YouTubeのプロ格闘技動画や映画のアクションシーンを何度も観察して、動きの起点と終点を把握する練習が上達への近道なんです。​
参考になる解説はこちらから
アクションシーンをレベルアップ!オニグンソウ先生に学ぶ演出の心構え

アクションシーンに迫力を生む極端なパース表現

迫力のあるアクションシーンには、誇張された極端な遠近法、いわゆる「オーバーパース」が欠かせません。拳や足、武器をカメラ方向に突き出すポーズで、それらのパーツを誇張して大きく描くことで、画面に強烈な臨場感が生まれます。
参考)https://www.palmie.jp/lessons/327

効果的な構図の目安として、見せたいパーツ(赤)とそれ以外の部分(青)の面積比を1対1にすると、まとまりが良くなります。ただしこれはあくまで指標なので、シーンの意図に応じて柔軟に調整しましょう。​
対角線構図を使うと、フレームの対角線上に被写体を配置することで奥行きが生まれ、手前が大きく映るため自然と迫力が増します。建物や乗り物などの背景要素とキャラクターを組み合わせるときに特に有効で、スケール感の演出にも役立ちます。
参考)カメラワークとは?映像制作に重要なカメラワークと構図の基本を…

参考になる技法解説はこちら
迫力のあるイラストの描き方!躍動感を出してカッコいい絵にする授業

アクションシーンのスピード感を高める効果線の技法

集中線は攻撃の威力を視覚的に強調する最も基本的な効果線です。クリップスタジオの特殊定規で放射線の消失点を作り、4~6本の大きなまとまりと2~3本の小さなまとまりを組み合わせると、メリハリのある迫力が生まれます。
参考)漫画は効果で盛り上げよう!効果線・背景効果で完成度に差をつけ…

流線は走行シーンや移動アクションに適しており、線が枠外まで突き抜けるか枠内で消えるかで印象が大きく変わります。枠外まで伸びる流線は次のコマへの勢いを、枠内で消える流線は冷静さと表情の際立ちを演出します。両方を混ぜることで、動きに緩急をつけられるんです。​
効果線を入れないコマをあえて作ることも重要なテクニックです。全てのコマに効果線を入れると画面がうるさくなるため、空白のコマを作ることで周りのスピード感がより際立ちます。トーンの効果線を使うと線画よりもすっきりした印象になり、読者の視線を人物に集中させられます。​

アクションシーンを強化する衝撃波とブレ線の描き込み

さらに上級の表現として、効果線に加えて「衝撃波」と「ブレ線」を描き込むことで、絵に存在感が増します。衝撃波は集中線と組み合わせて放射状の短い線で表現し、波紋を意識して手前を短く奥を長く描くのがコツです。​
ブレ線は関節からの移動距離を意識して、手前を長く奥を短く描きます。パンチの衝撃を伝えるために打撃部分に飛沫を飛ばしたり、グローブに質感を意識した描き込みを加えると、勢いを止める効果が出て動きにメリハリが生まれます。​
依田瑞稀先生(『マリッジトキシン』作画担当)によると、アクションをしているキャラクターは「のびのびとした線で構成したシルエット」を意識すると、見ていて気持ちがいい動きになるそうです。描き込みを増やすことでどこがどう動いているかわかりやすくなり、場合によって前後で強めのパースをつけることで迫力が増します。
参考)【第111回】『バトルシーンだけ!漫画賞』募集中!『マリッジ…

バトルシーンの描き込みテクニックはこちらが参考になります
マリッジトキシン作画担当依田瑞稀先生に聞く、魅力的なバトルシーンの描き方

アクションシーンの臨場感を高める描き文字テクニック

描き文字の大きさは音の大きさや衝撃の強さを直接表現します。生活音は小さめ、アクションシーンは大きめの描き文字で描くことで、シーンの激しさが読者に伝わりやすくなります。バトルシーンでは特に大きな描き文字を使うことで、迫力や激しさを強調できるんです。
参考)漫画の魅力を上げる描き文字の基本と6つのコツ【描き文字使い分…

文字の色も重要な要素で、黒い描き文字は重く、白い描き文字は軽く感じさせます。剣と剣がぶつかる場面では、打撃の強さを出したいときは黒、金属がぶつかり合う高い音や刃の鋭利さを印象付けたいときは白を選ぶと効果的です。​
シーンの雰囲気に合わせて描き文字の形や線質を変えることも大切です。同じ雨でも、柔らかい描き文字と激しい描き文字では伝わる印象がまるで違います。脳内で再生される音を言葉にして、伝えたい雰囲気に合わせて描き文字を描くのがコツなんですね。
参考)【漫画の描き文字】キマる効果音の描き方やコツを解説!初心者ほ…

アクションシーンで髪と衣装を動きの演出に活かす方法

キャラクターの髪の毛や衣装の動きは、アクションシーンのスピード感を視覚的に強化する重要な要素です。『ベヨネッタ』のキャラクターデザインでは、袖にまとめられた長い髪が四肢の動きを派手に見せる役割を果たしています。
参考)キャラデザ その①「ベヨネッタ」 - Bayonetta 開…

戦闘シーンでは、キャラクターの動きに合わせて髪の毛が大きくなびき、スピード感を演出します。ダイナミックなカメラワークと髪の動きを組み合わせることで、キャラクターの存在感を強調し、映像全体の迫力が増すんです。
参考)『もめんたりー・リリィ』の作画が異次元すぎる!髪の毛表現を徹…

女性キャラクターはアクションゲームで活躍するには手足が細く短く見えがちなので、見栄えを良くするために少しバランスをいじって手足を長くする工夫も効果的です。マントやスカーフ、リボンといった装飾品も、動きを強調するアクセントとして活用できます。​

アクションシーン初心者が実践すべき段階的練習法

アクションシーン作画の上達には、連続した動作の流れを捉える練習が不可欠です。YouTubeの格闘技動画やアニメーションを参考に、ハイキックや回転蹴りといった一連の動作をラフスケッチで再現してみましょう。動画を何度も確認して、瞬間的に体の構造を捉える訓練になります。
参考)連続した動作の流れを捉えるための練習法

スローモーション練習もおすすめで、ゆっくりと正確に動きを覚えることで、フォームの基礎が身につきます。ミラー練習での前で構えとフォームを確認したり、相手がいなくてもイメージして動くシャドー練習も効果的です。
参考)アクション俳優 小道具 基礎|初心者が押さえるべき練習ポイン…

参考作品としては『NARUTO』『ワンパンマン』『鬼滅の刃』などが挙げられます。これらの作品は魅せ方の宝庫で、コマ割りや効果線の使い方、カメラアングルの工夫など、学べる要素が豊富に詰まっています。プロのアクション動画も併せて観察することで、リアルな体の動きとマンガ的な誇張表現の両方を理解できるようになります。
参考)戦闘シーンの描き方に潜む落とし穴 かっこよく描けない理由と克…

実際の動作を観察できる資料はこちら
パターンを当てはめるだけ!悩まずにアクションシーンを描く方法