

スクリーントーンの色を変えると、そのまま印刷すると真っ黒につぶれて原稿が台なしになります。
アイビスペイントを使い始めると、「スクリーントーンはどこにあるの?」と戸惑う方が非常に多いです。背景素材タブをいくら探しても見つからないのには理由があって、スクリーントーンはブレンドモード(レイヤーの種類設定)の中に格納されています。通常の素材と同じ場所ではないので、初めての方がすぐに迷うのも当然です。
まず、画面上のレイヤーボタンをタップしてレイヤーウィンドウを開きます。新しいレイヤーを追加したら、そのレイヤーの「普通」と表示されている部分(ブレンドモードの選択欄)をタップしてください。選択肢の一番上の右側に「スクリーントーン」という項目が表示されます。これをタップすると、アミ点・砂目・縞模様など20種類以上のプリセットトーンが一覧で現れます。これが基本の場所です。
| 手順 | 操作内容 |
|---|---|
| ① | レイヤーウィンドウを開く |
| ② | 新規レイヤーを追加し、線画レイヤーの下にドラッグ |
| ③ | 「普通」と書かれたブレンドモードをタップ |
| ④ | 「スクリーントーン」を選択し、使いたい柄を選ぶ |
| ⑤ | ブラシまたはバケツ塗りで塗る |
レイヤーを線画の下に置くのが原則です。こうすることで、線がトーンに埋もれず、仕上がりが自然な漫画らしい見た目になります。スクリーントーンレイヤーに設定してから塗っても、塗りつぶしてから設定に変更しても、どちらの順番でも正しくトーンが表示されます。自分がやりやすい順番で構いません。
スクリーントーンに設定したレイヤーに対して、エアブラシやペンなど好きなブラシで描けば、描いた部分だけトーン柄が出現します。バケツ塗りで広い面積に一気に貼ることもできるので、使い分けると作業がとても速くなります。
参考:アイビスペイント公式の基本操作手順はこちらで確認できます。
ibisPaint公式 – レイヤー:スクリーントーン(基本操作)
スクリーントーンの濃さは、色の明度(明るさ)スライダーで調整できます。これが意外と見落とされがちな点です。カラーパレットを開いて、HSBモードに切り替えた後に「明度(B)」のスライダーを動かすと、同じトーン柄のまま点の大きさ・密度感が変わります。たとえば明度を80%に設定すれば淡い影、32%に設定すればしっかりとした影として使い分けることができます。
つまり、濃さの違いは明度で表現するということです。
アイビスのプリセットトーンには、大きく分けて以下のような種類があります。
印刷用漫画の場合、Dot L8より細かいトーン(L4・L6)は印刷機の解像度によっては点がつぶれてしまうことがあります。実際にアイビスの公式マニュアルでも「印刷原稿にはDot L12またはDot L16を推奨」と明記されています。SNS向けのデジタル公開だけであればL6でも問題ありません。用途によって選ぶトーンを変えることが大切です。
また、髪の毛などの複雑な輪郭を囲む際には、バケツ塗りではなくペンで直接なぞる方法が向いています。バケツ塗りは線画の隙間から色が漏れる場合があるためで、特に細かいパーツではペン塗りの方が修正の手間が少なくなります。これは使えそうです。
漫画を印刷したとき、画面上では問題なく見えていたのに、出力後にトーンがざわついたり、縞模様のように乱れてしまった経験がある方もいるかもしれません。これがモアレです。モアレは、規則正しいドットパターン同士が干渉し合うことで生じる意図しない模様で、印刷物の品質を大きく損ないます。
アイビスペイントでモアレを防ぐために、最重要の設定が2つあります。
① キャンバス作成時に解像度を600dpiに設定する
モノクロ漫画原稿にはカラーよりも高い解像度が必要です。一般的なプリンターの解像度は1200dpiで、その1/2の600dpiで作成すると、ドットの比率が整数倍になりモアレが起きにくくなります。アイビスのマンガ原稿テンプレートには「同人誌(A5仕上がり)600dpi」「同人誌(B5仕上がり)600dpi」が用意されているため、最初からこれを選ぶのが最も確実です。
② カラーモードを「2値化」に設定する
アイビスペイントのバージョン10以降では「2値化」というカラーモードが追加されています。このモードでは白と黒の2色のみで描画されるため、アンチエイリアス(輪郭をなめらかに見せるグレーの帯)が発生しません。グレースケールモードのままトーンを使うと、印刷時にアンチエイリアスのグレーが飛んでトーンの形が崩れ、モアレが生じます。600dpiと2値化、この2点がモアレ対策の条件です。
また、一度ラスタライズ(スクリーントーンを通常の画像データに変換)したトーンを拡大・縮小すると、ドットの形が崩れてモアレの原因になります。アイビスのスクリーントーン機能を使って貼ったレイヤーはラスタライズされていない状態なので、サイズ変更しても安全ですが、素材として外部からインポートしたトーン画像はラスタライズ済みのため拡大縮小は避けてください。
参考:アイビスペイント公式のモアレ・解像度解説ページ
ibisPaint公式 – マンガ機能紹介:マンガ原稿を作成しよう(解像度・モアレ解説)
アイビスペイントのスクリーントーンは、通常は白黒のアミ点や縞模様ですが、色を変えることもできます。ただし、色を変えたときの仕上がりが想定と大きく異なるケースがあるため、用途を確認してから操作してください。
色を変える方法は、スクリーントーンのレイヤーを選択した状態でカラーパレットを開き、黒以外の色を選んでから塗りつぶしやブラシで着色するだけです。これでアミ点や縞がカラーに変わります。ピンク色のトーンで頬の赤みを表現したり、青みがかったトーンで夜のシーンを演出するなど、カラー漫画や同人誌の彩色にも活用できます。
ただし、重要な注意点があります。カラーに変えたトーンを白黒印刷(モノクロ印刷)すると、設定によっては点が真っ黒につぶれて全域が黒く塗りつぶされたように出力される場合があります。これはプリンターがカラーのインクを使えないため、グレーや薄い色も黒として解釈されてしまうためです。モノクロ印刷に使うトーンは必ず黒(明度のみ調整)で描くことが条件です。
色変えトーンはデジタルのSNS投稿や、カラー印刷の同人誌向けに使うのが適切な場面です。白黒漫画の原稿には使わない、とだけ覚えておけばOKです。
レイヤーにフォルダを作り、フォルダに対してクリッピングマスクを適用することで、複数のトーンを一括管理しながら色変えする方法も存在します。作業効率を上げたいときには、この方法が向いています。
参考:スクリーントーンのカラー変更方法について、実例つきで解説されています。
ゆらり工房 – アイビスペイントでスクリーントーンの色をカラーに変更する方法2つ
アイビスペイントのスクリーントーン機能には、他のアプリではあまり語られない使い方があります。それが「ブラシ形状を変えてトーンを描く」という手法です。通常は丸い形状のブラシで塗りますが、エアブラシ(ノーマル)を選んでスクリーントーンレイヤーに描くと、ぼんやりとしたグラデーション状にアミ点が広がります。頬の赤みや夕焼けの空など、ふんわりした表現をモノクロで表したいときに非常に便利な技法です。
また、アイビスのマンガ背景フィルターを使うと、写真や手書きのラフ線をそのままスクリーントーン風の背景に変換できます。フィルターから「アート」→「マンガ調背景」を選び、スライダーでトーンの大きさ・輪郭の濃さを調整するだけです。背景を描くのが苦手な方でも、写真一枚からそれらしい背景を5分以内に仕上げることができます。これは使えそうです。
仕上げで失敗しないために、以下の2点を作業前に確認してください。
さらに、完成した原稿を印刷所に入稿する前に一度コンビニのコピー機(白黒)で試し印刷することを強くおすすめします。10円〜20円で確認できるのに対して、印刷所に入稿してから気づくとデータ修正・再入稿で数千円から数万円の追加費用が発生することがあります。コンビニコピーで試し印刷する、それだけで大きな損失を防げます。
スクリーントーンを上手く使いこなせると、モノクロ漫画の情報量が格段に増えます。影・質感・空気感・距離感など、色がなくても表現できる幅が広がります。アイビスペイントのプリセットだけでも20種類以上のトーンが揃っており、それだけでほとんどの表現シーンをカバーできます。
もし「もっと細かいトーンが欲しい」「特殊な柄を使いたい」という場合は、マンガパーツSTOCKやイラストACなどのサイトから商用フリーのトーン素材をダウンロードし、アイビスに読み込んで選択範囲に貼り付ける方法があります。この場合もラスタライズ済み画像になるため、貼り付け後の拡大縮小には注意してください。
参考:外部スクリーントーン素材の入手先と貼り付け方の解説が参考になります。
Q太郎とシュゾー – アイビスペイントでスクリーントーンを使う2種類の方法