
白塗りは漫画やイラスト制作において、修正作業とハイライト表現の両方を担う重要な技法なんです。アナログ制作では間違えた部分の修正や、瞳のキラキラ、光が当たっている部分の描写に使われます。デジタル制作では背景が人物に透けてしまうのを防ぐために、人物の形に白で塗りつぶしたレイヤーを背景の上に挟む手法が広く使われているんですね。
参考)背景が人物に透けてしまうのを回避する白塗りの方法について。 …
この白塗りを雑に扱ってしまうと、原稿のクオリティが一気に下がり、作品全体の印象にも影響してしまいます。プロの漫画家も最後まで丁寧に白塗り作業を行うことで、画面を引き締めているんです。
参考)【漫画の描き方】ベタとホワイトの手順 - 楽しくお絵かき空間
白塗りには大きく分けて「修正のための白塗り」「ハイライトのための白塗り」「下地としての白塗り」の3つの用途があり、それぞれ適切な手順とツールを使い分けることが重要になります。
デジタルで白塗りを行う際は、レイヤー構造を理解することが成功のカギなんです。
参考)塗り漏れがなくなる!安心安定!下塗りのコツ
まず背景が人物に透けるのを防ぐ白塗りの手順ですが、人物以外の空間を自動選択ツールで選択し、選択範囲を反転させます。この時点で人物の中だけが選択される状態になるんですが、ここからが重要なポイントです。
単純にバケツツールで塗ろうとすると、線で区切られた箇所しか白くならない失敗が起こりやすいんですね。これを解決するには、範囲選択をした後、上部メニューの「編集」から「塗りつぶし」を選択すると、選択範囲内を全て一気に塗りつぶせます。
また「他レイヤーを参照」の塗りつぶしツールを使う場合は、線画を拾ってしまう状態になるため注意が必要です。背景部分を選択している時に描線に触れていないか確認することも大切なポイントになります。
CLIP STUDIO ASKの白塗り解説では、選択範囲の扱い方について詳しい回答が掲載されています。
下塗りの段階では、線画の下まできちんと塗ることが重要なんです。内側だけ塗る状態で進めると、線の真下が塗られていない状況になり、塗り残しが発生してしまいます。はみ出してから消していく方法が、プロも実践している確実なやり方なんですね。
アナログ制作における白塗りは、ベタ塗りとの順番が作業効率を大きく左右します。
正しい作業順序は「ペン入れ→ベタ塗り→ホワイト(修正)→ハイライト」という流れなんです。ホワイトを先にしてしまうと、ベタ塗りの際にはみ出した部分をまた修正するという二度手間になってしまうため、必ず先に黒い部分を全て塗り終えてからホワイト作業に入るのが鉄則です。
ベタ塗りの具体的な方法としては、塗りたい部分の中を先にミリペンなどでふちどり、大きな面積はマジック等で、細かい部分は細いペンで塗っていきます。油性マジックは黒くなりますが、境界が少しにじんだり裏移りする可能性があるため注意が必要です。
参考)アナログ作業ちょっとした疑問集 ~ベタ~ホワイト・トーン編~…
ツヤベタは髪に光が当たっている部分の表現で、筆ペンで光が当たっている場所を残してサッサッとはらいながら塗っていくのが基本です。初めての時は必ず失敗するくらい難しくテクニックが必要な作業なので、諦めずにコツコツ練習を続けることが大切なんですね。
楽しくお絵かき空間のベタとホワイト解説では、初心者向けに写真付きで詳しい手順が紹介されています。
ホワイトの修正作業では、はみ出した部分を先に修正した後に、光があたる部分やキラキラさせたい部分に追加でホワイトをのせていきます。インクとの相性が悪いと灰色ににじんでしまうこともあるので、その場合はインクかホワイトどちらかを変えてみるとよいでしょう。
デジタル制作において、白塗りと密接に関係するのが選択範囲とクリッピング機能なんです。
参考)19【お悩み相談】クリスタ超初心者講座【クリッピングで色塗り…
クリッピング方式は、レイヤー数は多くなりますが塗り残しの心配が少なく、初心者でも扱いやすい方法として広く使われています。まず色土台となるレイヤーを作成し、その上に色別にレイヤーを作成していきます。全部色を置き終わったら、色ファイルをクリッピングすることで、ファイルの中のレイヤー全てが下の色土台にクリッピングされるんですね。
面積が大きい順にレイヤーを重ねていくと、塗り残しが気にならなくなるというメリットもあります。色土台は塗り残しがあっても、後で塗り足したり削ったりすればOKなので、そこまで神経質にならなくても問題ないんです。
ただしクリッピングすると反射などの白が入れれなくなるため、線の白塗り用(線画にクリッピング)と反射の白塗り用でレイヤーを分けると、最終的に管理しやすくなります。
参考)クリスタで漫画を描く練習をしています。 - 黒ベタの後に白塗…
塗りつぶしツールの「ベクター中心線で塗り止まる」という設定を使うと、ぼかした線画の隙間も綺麗に塗りつぶせるんです。少々クセのある機能ですが、理解すると塗り作業が格段に改善されます。
参考)クリスタ「ベクター中心線で塗り止まる」設定で隙間を塗ろう!|…
下地を塗る際は、一番下に灰色を敷いておくと色が把握しやすくなり、線画のキャラ全てを選択して白でベースを置いておくと、その後の作業がスムーズになります。
白塗りで失敗してはみ出してしまった場合でも、適切な修正方法を知っていれば問題なく対処できます。
参考)【コピック】簡単!はみ出さずに塗るコツ・はみ出した時の修正方…
デジタルでの修正は、消しゴムツールや白で上から塗り直す方法が基本ですが、透明度保護機能を使うとはみ出した部分だけを効率的に修正できるんです。レイヤーの「不透明度保護」にチェックを入れてから塗り直すと、既に塗られている部分にのみ色が乗るため、はみ出し防止になります。
参考)見えやすい色で進めよう! 下塗りのやり方とコツ
アナログでの修正には複数の方法があります。ポスターカラーの白を筆で塗る方法は、盛り上げずにきれいに二度塗り位で消すと、うまく上から再度描けるんですね。ペンホワイトは蓋を開けたまま放置すると固まりやすいので、使用後はしっかり蓋を閉めることが長持ちのコツです。
参考)ベタ、ホワイトがハミ出しちゃう!上手く塗るコツは? - 漫画…
修正液タイプでは、極細の先端が細かい部分までしっかり修正してくれる製品がおすすめです。ハケタイプは一本で修正とハイライト両方をこなせる優れものですが、慣れるまで少し練習が必要になります。
ホワイトのハイライトを使う場所としては、瞳の中、髪の毛、光があたる外側のラインなどを中心にさりげなく入れるとよいでしょう。ただし少女漫画と少年誌では表現が異なるため、雑誌のカラーに合わせて調整することが大切です。
線画抽出する際は、CLIP STUDIO PAINTの機能を使って線画をハッキリと黒く、それ以外は白くなるような調整をすると、後の白塗り作業がスムーズになります。
参考)アナログイラストを線画抽出するには?デジタルで色塗りするため…
白塗りは地味な作業に見えますが、これをするだけで一気に見栄えがよくなり、画面が締まるんです。最後まで丁寧に塗ることで、作品のクオリティを高く保つことができます。
白塗りの応用技術として、グリザイユ画法との関連性を理解しておくと表現の幅が広がります。
参考)【イラストテクニック】ちょっと差がつく「グリザイユ画法」を学…
グリザイユ画法は、白と黒の階調でグレーの絵をつくり、後からカラーで色をのせていく技法なんです。影と色味を同時に塗っていく通常の塗り方とは違い、最初にグレースケールで陰影だけを塗り、後からオーバーレイで色を乗せていくという特徴があります。
参考)グリザイユ画法で塗る手順を解説!基礎知識から描き方メイキング…
この手法は厚塗りと相性が良く、重厚感のある厚塗りが比較的短時間で塗れるのがメリットなんですね。白と黒のグラデーションをしっかり作り込むことで、後から色を乗せた時にコクのある仕上がりになります。
グレーで塗ったレイヤーに使用するレイヤーの合成モードは「オーバーレイ」「リニアライト」「カラー」のうちからお好みで選びます。グレーの偏りによって相性の良し悪しがあるので、実際に使用してみて相性の良い合成モードを使うとよいでしょう。
白髪の塗り方では、繊細なグラデーションや陰影の描き込みを入念に行なうことによって、髪の艶が表現されます。納得がいく質感となるまで、しつこく描き込むことがポイントなんです。
参考)艶のある白髪の塗り方【厚塗りキャラクターメイキング】
アナログ水彩風の質感を出したい場合は、ベタ塗りではなく色にむらっけがある塗り方を意識すると、アナログっぽさが出てきます。ブラシ自体に紙目の質感があるものを使うと、むらっけのあるアナログ的な色味が得られるんですね。
参考)水彩・アナログ風質感のイラスト彩色解説 by sdt - お…
デジタルとアナログでは白の見え方が異なる点も理解しておく必要があります。モニタで絵を見る場合はモニタ自体が発光体なので白が強く黒が弱く見えますが、紙は逆に黒が強く白が弱く見えるんです。出力をイメージして使い分けることが、完成度の高い作品を作るコツになります。
参考)デジタル作画で僕が気をつけていること|佐藤秀峰
白目の下塗りでは、線で囲って塗り潰した後に形を整え、水彩系のブラシでフチをぼかす方法が効果的です。レイヤーの「不透明度保護」にチェックを入れ、黄色寄りの白で塗り潰すと自然な白目の表現ができます。
白塗りは単なる修正作業だけでなく、表現技法としても重要な役割を果たしているんですね。基本をしっかり押さえた上で、自分の作風に合った応用方法を見つけていくことが、上達への近道と言えるでしょう。