

ワンループ巻きで描いたキャラは、実はシーンの印象が80%変わります。
漫画やイラストでメンズキャラクターにマフラーを描くとき、「なんとなく首に巻いてある布」として処理していませんか。実は、巻き方の種類が変わるだけで、キャラクターが発するオーラや性格の印象はがらりと変わります。ファッション資料として巻き方を理解しておくことは、漫画家・イラストレーター志望者にとって非常に大きな武器になります。
まず最初に押さえておきたいのが「ワンループ巻き」です。マフラーを半分に二つ折りにして首にかけ、できた輪に両端を通すだけというシンプルな構造です。この巻き方は生地が4枚重なるため、実際の防寒性も一般的な二重巻きよりも高く、TBSの気象専門番組でも「一番温まる巻き方はワンループ巻き」として紹介されたほど実用的な巻き方です。首元がすっきりとまとまり、どんなアウターとも相性が良いため、「普通の学生」「主人公タイプ」「頼れる先輩」など、読者に馴染みやすいキャラクターに向いています。
次に「一周巻き(プレーンノット)」です。片方を長めに垂らして首に一周させるだけのこの巻き方は、左右の垂れ方や長さの差で印象が大きく変わります。ざっくりした雰囲気が出やすく、カジュアルなキャラクターや普段着シーンに最適です。長さの基準としては、男性の場合は身長±10cmが目安とされており、170cmの男性であれば160〜180cmのマフラーがちょうどよい長さになります。これはコーデの参考にもなりますが、漫画で描く際に「どこまで垂れるか」「どの程度ボリュームが出るか」を正確に描くための知識としても役立ちます。
三つ目は「ニューヨーク巻き」です。一周巻きをベースに、左右に垂れた両端を前でクロスしてひと結びしたスタイルで、胸元に自然なボリューム感と立体感が生まれます。チェスターコートなど、前が深く開いたアウターとの相性が特に良く、「都会的な大人」「クールな人物」「物語のキーパーソン」などを表現するのにぴったりです。
つまり、基本3種類だけで3タイプのキャラが描けます。
| 巻き方 | 構造の特徴 | キャラクターのイメージ | 向くシーン |
|---|---|---|---|
| ワンループ巻き | 二つ折り・輪に通す・生地4枚重なり | 真面目・主人公・誠実 | 登校・日常・冬の街 |
| 一周巻き | 1本垂らし・片方長め・シンプル | カジュアル・フレンドリー | 公園・放課後・帰り道 |
| ニューヨーク巻き | 一周+前クロス結び・立体的 | クール・大人・都会的 | 夜の街・ドラマチックなシーン |
参考:ワンループ巻きが最も防寒性が高い理由を科学的に解説しているTBSの記事はこちら。
「ピッティ巻き」は「ミラノ巻き」とも呼ばれ、イタリアで年2回開催される世界最大級のメンズプレタポルテ見本市「ピッティ・ウォモ」の参加者たちが愛用していた巻き方が語源です。つまり、イタリアのおしゃれな紳士たちが生み出したスタイルというわけです。意外ですね。
手順は以下の通りです。
この巻き方は立体的な結び目が正面に浮き上がり、シンプルなコートやジャケットを一気に「こなれた大人」の印象に変えます。漫画での活用場面としては、「知的な先生キャラ」「自信家の上司」「おしゃれに気を使う男性脇役」などに特に効果的です。ピッティ巻きは長さが150cm以上ないとうまく形が出ないため、描く際もマフラーの「長さ感」を意識すると説得力が増します。
また、「アスコット巻き」はスーツやテーラードジャケットと組み合わせると、フォーマルかつ上品な雰囲気が出ます。この巻き方はブランドのロゴや刺繍が正面に見えるよう設計されており、漫画内でブランドロゴや柄を「見せる」シーンを描きたいときに非常に便利です。「お金持ちのキャラ」「ライバルキャラ」「冬の発表会シーン」などに向いています。
これは使えそうです。
一方で「バック巻き」は、結び目を背面に回してフロントをすっきりさせる珍しい巻き方です。フード付きのアウターとの相性が良く、スポーティかつアクティブな印象になります。「動きの多いシーン」「スポーツ系のキャラクター」「自転車で疾走するシーン」など、動きのあるコマに向いています。
参考:各巻き方の手順をアウターとのコーデ別にまとめているのでこちらも参考になります。
【図解付き】メンズ向けマフラーのおしゃれな巻き方10選(SOLVE)
実際に巻き方の種類を知ったとしても、それをイラストで「それらしく」描けなければ意味がありません。ここが多くの漫画・イラスト初心者がつまずくポイントです。マフラーは布の一種であり、布には必ず「折り重なり」「たるみ」「シワ」の3要素が生じます。
折り重なりは、マフラーが首に巻きつく際に必ず前後で布が重なる部分を指します。描く際は、前面から見えている布と、その背後に隠れている布の境界線を意識して線を入れると、一気に立体感が出ます。ワンループ巻きであれば、輪の部分と通した端の部分が重なる位置が必ずあり、そこに1〜2本のシワ線を入れるだけで「本物らしさ」が格段に増します。
たるみは、マフラーが自然に垂れ下がる部分に現れます。重力に沿って下方向にカーブする線を意識することが重要です。特にニューヨーク巻きの結び目より下に垂れる部分は、ストンと直線的に落ちるのではなく、少し弧を描くように垂れることを覚えておきましょう。
シワは、布が押しつぶされたり引っ張られたりする場所に発生します。首元の結び目付近は圧力がかかるため、細かいシワが集中します。一方、自由に垂れている部分にはほとんどシワが入りません。この「シワが多い場所・少ない場所」の差をつけるだけで、マフラーを描くリアリティが劇的に上がります。
影の入れ方も重要です。マフラーの後ろ側、布が重なってできる影、シワの部分に影を入れると立体感が増します。影の中にグラデーションを加えると、さらに素材感が出てきます。
シワの位置が大切です。
漫画家・イラストレーターのためのマフラーの巻き方イラスト資料としては、お絵かき図鑑に掲載されている種類別の巻き方解説が参考になります。
また、デジタルイラストにおける布のシワ全般の描き方については、CLIP STUDIOの公式コラムが詳しく解説しています。
劇的に立体感がアップする!服の自然なシワの描き方(CLIP STUDIO)
ここは検索上位の記事では触れられていない、漫画家志望者ならではの視点です。マフラーの巻き方そのものが、キャラクターの「性格」「状況」「心理状態」を無言で読者に伝える演出ツールになるという発想は、漫画表現においてかなり重要です。
たとえば、物語の序盤で「きっちりとワンループ巻きをしている主人公」を描いたとします。それが終盤になって「巻き方が崩れた垂らし巻きになっている」シーンを入れると、読者は言葉がなくても「何かあったのかな」「精神的に消耗しているのかも」と感じ取ります。この「マフラーの乱れ=心の乱れ」という視覚的表現は、コマ数を使わずに感情の変化を伝える効率的な技法です。
逆に、ぐるぐる巻きやぎゅっとしたウィンディ巻きは「守りに入っている」「誰かに心を開いていない」「寒さや状況から自分を守ろうとしている」という内向きな心理を暗示できます。SPUのブログでも「ぐるぐる巻きは自転車に乗るメンズが垂れないようにするための実用的な巻き方」と紹介されていますが、漫画的には「自分の世界に閉じこもったキャラクター」のメタファーとして機能します。
また、2人のキャラクターが「同じ巻き方をしている」シーンを描くと、言葉なしで「このふたりは価値観が近い」「互いに影響し合っている」ことを示す演出になります。漫画的な伏線として、物語序盤に主人公と別のキャラクターがたまたま同じ巻き方をしているシーンを入れておき、後のシーンで「実はつながりがあった」ことを明かす伏線として機能させることもできます。
結論は「巻き方は無言のセリフ」です。
さらに、マフラーの色と巻き方を組み合わせた表現も有効です。たとえば「赤いマフラーをピッティ巻きで着こなす人物」は視覚的に「情熱的かつ洗練された人」という印象を強く与えます。一方で「くすんだグレーのマフラーを垂らし巻きでぼんやりしている人物」は「疲弊している」「やる気がない」という状態を象徴します。巻き方×色という組み合わせ表現を意識するだけで、漫画の情報密度が高まります。
漫画でキャラクターの冬コーデを描く際、マフラーの巻き方とアウターの組み合わせが「違和感なく見えるか」は、読者が無意識に感じるリアリティに直結します。実際のメンズファッションではアウターの種類によって相性の良い巻き方が異なるため、この知識を持っておくことは非常に重要です。
また、マフラーそのものの素材の違いも描き分けに関係します。ウールやカシミヤなどの天然素材は保温性が高い一方、ふんわりとした柔らかい質感があり、巻いたときにたるみやシワが多く出ます。一方でポリエステルなどの化学繊維は比較的硬めでシャープな形をキープしやすく、イラストでは線がすっきりしている表現が合います。素材感の違いを線の描き分けで表現できると、作品の完成度が一段階上がります。
こうした知識の違いが「それっぽい絵」と「説得力のある絵」を分けます。
参考:アウター別のマフラーコーデと巻き方の組み合わせが実例と共に解説されています。
ダウンジャケット×マフラーの注目メンズコーデを紹介(男前研究所)
参考:素材ごとのマフラーの特性をまとめた記事はこちらです。

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