
漫画制作において、ストーリーとプロットを混同してしまうと、読者に伝わりにくい作品になってしまいます。
参考)【マンガの研究】ストーリーは時系列、プロットは見せる順番。|…
ストーリーとは、出来事を時系列に沿って並べたものを指します。キャラクターが実際に体験する出来事を、古い順から新しい順へと整理していく作業なんです。例えば「桃太郎」なら、おじいさんとおばあさんが桃を拾い、育て、鬼退治に出かけて宝を持ち帰るという流れですね。この段階では、作者が「こうしたい」という都合ではなく、キャラクターが実際にどう行動するかを想像することが大切になります。
一方、プロットは読者に「見せる順番」を決める作業です。時系列に沿った出来事を、どのような順序で読者に提示すれば最も効果的か考えます。緊張感を高めたいシーンの前に回想を挟んだり、クライマックスに向けて情報を小出しにしたりする演出がこれに当たります。
ストーリーは時系列、プロットは見せる順番 - note
時系列を理解した上で見せる順番を工夫することで、読者の感情を揺さぶる物語が生まれるんです。
漫画において時間経過を視覚的に表現するコマ割りテクニックは、読者の理解を助ける重要な技術です。
参考)漫画のコマ割りで時間経過を表現するテクニック - haru-…
最も基本的な方法は、コマの右側に斜線を2~3本引く技法です。一番右の線をコマいっぱいに描き、左に向かって徐々に短くしていくことで、数分から数時間程度の時間経過を表現できます。線の本数を増やせば、より長い時間の経過も示せるんです。
もう一つの手法として、何も描かれていない四角形のコマを1~3コマ配置する方法があります。右から左へとコマを小さくしていくことで、1~2コマなら数分から数時間、2~3コマなら一日経過といった具合に時間の長さを調整できます。このコマにトーンで明暗をつければ、朝から夜への移り変わりや、感情の変化まで表現可能になります。
漫画のコマ割りで時間経過を表現するテクニック
何ヶ月・何年という長期間の経過を描く場合は、季節の変化(雪から桜吹雪へ)や人物の成長(制服の変化、髪の長さの変化)を組み合わせると効果的です。
同じ時間帯に別々の場所で起きている出来事を描くには、特殊なコマ割りテクニックが必要になります。
通常、漫画のコマとコマの間隔は、横方向を狭く、縦方向を広くとります。しかし同時刻の別行動を表現する際は、この間隔を逆転させるんです。横方向の空白を広くとることで「別の場所」であることを示し、縦方向を狭くすることで「同じ時間」であることを読者に伝えられます。
この技法を使えば、主人公が戦っている最中に仲間が別の場所で準備をしているシーンなど、複数の視点を効果的に描写できます。
時間経過を示すコマの配置場所も重要で、右ページの右上や左ページの右上など、切りの良い場所に配置すると読みやすくなります。ただし毎回同じパターンだと読者が飽きてしまうため、時間経過シーンを適度に挟むことでメリハリが生まれます。
回想シーン(フラッシュバック)は、時系列を意図的に崩すことで物語に深みを与える重要な演出技法です。
参考)回想シーンで巻き返しを生み出す方法
回想シーンには大きく分けて「回顧シーン」と「インスピレーション」の2種類があります。回顧シーンは主人公の過去の事情や背景を読者に伝えるもので、物語の序盤に配置するのが効果的です。序盤で主人公の素性を少し謎めかせておき、中盤以降に回顧シーンで明かすことで「だからこの主人公はこんな行動をしていたのか」と読者を納得させられます。
参考)回想シーンには2種類ある
一方、インスピレーション型の回想は、主人公が窮地に立たされた中盤以降に配置します。例えばラスボス戦で瀕死の主人公が、幼い頃の師匠の言葉を思い出して立ち上がるような展開です。この「巻き返しのトリガー」としての回想シーンは、読者の心を強く揺さぶります。
回想シーンで巻き返しを生み出す方法
回想シーンを効果的に使うことで、主人公の動機の深堀り、伏線の回収、謎解きといった多彩な効果が得られるんです。ただし多用しすぎると物語のテンポが悪くなるため、緊張感を削がない程度のバランス感覚が求められます。
漫画のテンポ感は、読者が脳内で補完する情報量によって大きく変化します。
参考)【創作語り】漫画の『テンポ感』って?|つくも
コマを割ると時間が経過するという漫画独特の特性を理解することが重要です。初めと結果だけを描いて間の映像を全て省略すれば、テンポの速い展開になります。逆に時間経過をゆっくり見せたい場合は、間のコマを丁寧に描く必要があるんです。
長めのカットを大きな一コマに収めることで、時間を短縮する省略表現も可能です。さらに上級テクニックとして、本来一コマで済むところを大量に割ることで、読者の脳内補完を減らして情報密度を上げ、勢いを出す手法もあります。
キャラ同士でテンポよく会話をさせるコツ - CLIP STUDIO
会話シーンでは、コマ単位で時間を途切れさせないことが大切です。例えばあるコマで疲れているキャラクターを描いたら、次のコマでも疲れた状態を維持することで、作中の時間が自然に流れているように感じられます。見開きないし数ページにわたって時間の流れを維持することで、良いリズム感が生まれるんです。
テクニック | 効果 | 使用タイミング |
---|---|---|
斜線を引く | 数分~数時間の経過表現 | 短い時間経過を示したい時 |
空白コマ配置 | 一日程度の経過表現 | 場面転換や日付変更時 |
明暗の変化 | 朝夜の移り変わり | 時間帯の変化を強調したい時 |
季節・人物変化 | 数ヶ月~数年の経過 | 長期間の成長を描く時 |
コマ間隔の調整 | 同時刻の別行動 | 複数視点を同時に描く時 |
時系列に沿った表現は、社史や郷土史、自分史といったドキュメンタリー系漫画で特に重要になります。
参考)https://www.tttombo.com/tombo2-manga-seisakuyougo-sa-jikei_retu.html
時系列とは、時間的に古い出来事から順に列記することを指します。歴史や会社の成長過程を描く際、過去から現在までの流れを時間に沿って紹介する方が、読者にとって分かりやすく親切だからです。
社史を漫画化する場合、創業者が若かった頃から代表取締役、そして会長へと成長していく姿を時系列で描くことで、人物の変化が明確に伝わります。経年による姿や顔の変化を視覚的に表現できるのは、漫画ならではの強みなんです。
役に立つ漫画制作用語の説明「時系列」
時間軸を設定して事物や人物が変化し成長していく姿を描くには、漫画が非常に適したツールといえます。会社が何年にどのような苦難を乗り越えて現在に至ったかを時系列で描くことで、読者は組織の歴史を体感できるようになります。
郷土史や自分史でも同様に、時系列に沿った構成が増えています。地域の発展や個人の人生の軌跡を、時間の流れとともに描くことで、説得力のある物語が完成するんです。