
フレーミングとは、コマ枠の中にキャラクターや背景の「どこまでを描くか」を決める技法のことなんです。写真や映像制作でも使われる用語ですが、漫画においては読者に見せたい情報をフレームで切り取るという意味で使われています。フレームの中に何を入れて何を入れないかという選択が、そのコマの意味や演出効果を大きく左右するんですね。
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漫画制作において、フレーミングはカメラアングルと並んで構図を決定する2大要素となっています。被写体となるキャラクターの体のどこを描くかによって、読者に伝わる情報の種類や量が変化するため、シーンの目的に合わせた選択が求められるわけです。
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同じ構図ばかりが続くと読者は退屈してしまうため、意図的にフレーミングを変化させることで、漫画にメリハリと読みやすさを生み出すことができます。特に初心者が陥りがちな「顔漫画」から卒業するには、このフレーミングの使い分けが鍵となるんです。
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漫画のフレーミングには基本となる3つのパターンがあります。まず1つ目が「アップショット」で、これはキャラクターの顔部分を大きく描いた構図です。表情から感情がよく伝わるため、キャラと読者の感情移入を促したいときに最適なんですね。また、アップで描かれたものは強く印象付けることができるので、見せたいものを特に強調する効果もあります。
2つ目が「ミドルショット」で、胸から膝までを描いた構図になります。この構図は表情、動き、状況などいろんな情報を伝えることができる便利な構図なんです。「胸まで」「腰まで」「膝(太もも)まで」と描く範囲によって読者に伝わる情報は変わってきます。特に胸までのバストショットは、日常会話のシーンに近い視界となるため、キャラ同士の会話や日常シーンで多用されています。
3つ目が「ロングショット」で、コマ枠内にキャラクターの全身を描いた構図です。全身が入るため、キャラを取りまく状況や周囲の環境を伝えることができるのが特徴なんですね。ただし、アップやミドルに比べると表情などの細かい部分は伝わりづらいので、状況説明やアクションシーンなど感情移入の必要がない所で使うのが効果的です。
フレーミングの演出効果として特筆すべきなのが、「徐々にアップ」という技法です。これはキャラを徐々にズームアップしていく演出で、圧力をかけるときや注目をさせたいときに使用します。汎用性が高い演出法なので、緊迫したシーンから日常的な場面まで幅広く活用できるんですね。
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また「ときめきの間」という演出も、フレーミングを活かした技法の一つです。何か嬉しいことや照れるようなことを言われた後に、表情をアップで見せる演出なんですが、ときめきの感情だけでなくショックなことを言われた際などにも使えます。ただし使いすぎるとテンポが悪くなってしまうので、見せ場や表情を強調させたいときに限定して使うのがコツです。
さらに「サイレント」という演出法も、フレーミングの選択と深く関わっています。セリフやモノローグを使わずに伝える演出法で、文字が無い分キャラの表情や仕草が注目されます。このとき適切なフレーミングを選ぶことで、言葉がなくても読者に感情を伝えることが可能になるわけです。
フレーミングの効果を最大限に引き出すには、カメラアングルとの組み合わせが重要になってきます。カメラアングルは「被写体をどこから見るか」という視点の角度と位置を決めるものです。主なアングルには「俯瞰(ふかん)」「水平アングル」「煽り(あおり)」の3種類があります。
俯瞰は対象を上から映したアングルで、上から見下されているという印象を与えることができます。弱者、挑戦、ネガティブなシーンと組み合わせると効果的なんです。特にロングショット+俯瞰を組み合わせると、高い所から見下ろしたような構図になるので、キャラクターと周囲の距離感や状況を説明するのにおすすめです。ただし第三者的な目線になるため、感情移入は難しくなることに注意が必要ですね。
煽り(あおり)は対象を下から映したアングルで、下から見上げるような構図となります。臨場感があり迫力を出しやすい構図で、煽りで描かれた対象は威圧感が増して大きく、強く見せることができます。強者の迫力や対象の大きさを強調したいときに効果的な手法です。
水平アングルはカメラを水平にして構える基本的なアングルですが、多用すると平凡な構図ばかりになるので注意が必要なんです。そのため、フレーミングとカメラアングルの両方に変化をつけることで、読者を飽きさせない演出が可能になります。
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フレーミングを使う上で初心者が陥りがちな失敗として、同じ構図の連続があります。キャラの大きさも同じくらいで、カメラアングルにもあまり変化がないと、読者が退屈してしまうんですね。構図が連続してしまわないよう、ロングショットのコマの次はアップショットコマ、といったようにバラバラに使うことで、それぞれの良さが引き立ちます。
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また、キャラクターの向きにも注意が必要です。例えば、追いかけられているシーンで、最初に右側に怪物を見せてから、次のコマで主人公が右側を向くと、まるで怪物に向かっているように受け取れてしまいます。意図する場合以外は、急に向きを変えると読者が混乱してしまうため、前コマとの連続性を意識することが大切なんです。
会話シーンでも同様の問題が起こりやすいです。キャラの向きがコロコロ入れかわると、誰が誰に向かって話しているのか分かりづらくなります。基本的にキャラの向きは前コマと同じにするのがセオリーで、こうした向きに気をつけることによって、混乱なく読むことができるわけです。
さらに、効果線の使い方にも工夫が必要です。ほとんどのコマに効果線を入れたくなりますが、全てのコマに無理に入れる必要はありません。空白のコマを作ることで、周りの効果線のスピード感がより際立つんですね。漫画は緩急が大事なので、あえて一呼吸入れることも意識しましょう。
参考となる構図やフレーミングのテクニックについては、MediBang Paintの公式ガイドで詳しく解説されています。
顔漫画から卒業!漫画の基本構図を覚えよう - MediBang Paint
また、具体的な構図パターンと実例については、こちらの記事が参考になります。
マンガの基本構図5パターンと描き方のコツを参考実例を交えて解説
カメラワークと演出のテクニックについて、より実践的な知識を得たい方には、いちあっぷの連載記事が役立ちます。
読者を飽きさせない演出テクニック カメラワーク入門
漫画の演出方法を体系的に学びたい場合は、お絵かき図鑑の記事で14パターンの演出法が紹介されています。