
スクリーントーンは、モノクロ漫画において濃淡や質感を表現するために不可欠な画材です。主な種類として「アミトーン(網点トーン)」「グラデーショントーン」「効果トーン」「雰囲気トーン」の4つに分類されます。
アミトーンは肌や影の表現に最も使われ、ドットの密度と大きさが「線数(L)」と「濃度(%)」で表記されています。例えば「60L・10%」は線数60で濃度10%を意味し、線数が高いほどドットが細かく、濃度が高いほど暗く見えるんです。初心者が最初に揃えるべきなのは、汎用性の高い「60L・10%」「60L・20%」「60L・30%」の3種類とされています。
参考)トーン|プロに近づく!漫画の描き方 - 株式会社Too
グラデーショントーンは、奥行きのある背景や光の表現に効果的です。一方、効果トーンには集中線やフラッシュ、スピード線などがあり、キャラクターの感情や動きの勢いを演出できます。雰囲気トーンは、キラキラやふわふわといった心理描写を背景に表現する際に使用され、特に少女漫画で多用されます。
デジタル環境では、CLIP STUDIO PAINTなどのソフトウェアを使うことで、トーンが減らず削りカスも出ないというメリットがあります。新規トーン作成時に線数・濃度・種類・角度を自由に設定でき、通常は45度の角度が推奨されています。
参考)トーンを使いこなす 基本編1 - トーン - 機能解説!トラ…
トーン|プロに近づく!漫画の描き方では、トーンの基礎知識と貼り方の手順が詳しく解説されています。
モアレとは、トーンの重ね貼りをした際に発生する不要な縞模様のことで、印刷物の品質を大きく損なう原因となります。この現象は、異なる線数のトーンを重ねたり、同じ線数でも点の並ぶ角度が異なる場合に発生するんです。
モアレを防ぐための基本原則は「同じ線数同士のトーンを重ねる」ことです。例えば60Lのトーン同士なら綺麗に重なりますが、60Lと50Lを重ねるとモアレが出やすくなります。アナログ作業では、トーンの端に記載されている線数と濃度の表記を必ず確認してから重ね貼りする習慣をつけることが重要です。
参考)モアレが発生する条件(全パターン) by 秋空広樹 - お絵…
デジタル環境でのモアレ対策として、書き出し設定を適切に行う必要があります。クリスタで漫画原稿を作成する場合、解像度を600dpi以上に設定し、トーンレイヤーの線数を統一することで、印刷時のモアレ発生リスクを大幅に減らせます。
参考)同人誌にモアレが発生する4つの原因と対処方法
また、雰囲気トーンを重ねる際は、丸い形のトーンと四角い形のトーンを同時に使用すると画面がごちゃついてしまうため注意が必要です。網点で作られているトーンの場合は特にモアレが起きやすいので、重ね貼りする前にテスト印刷を行うことをおすすめします。
参考)雰囲気トーンの演出方法
同人誌にモアレが発生する4つの原因と対処方法には、印刷トラブルを避けるための具体的な設定方法が掲載されています。
キャラクターの心情を視覚的に伝えるトーンワークは、漫画表現の醍醐味といえます。喜びや楽しさといったプラスの感情を表現する際は、明るめの雰囲気トーンを選び、キラキラやふわふわといった柄を使用します。具体的には星やハート、花などのモチーフが効果的で、少女漫画では特に幻想的な演出が好まれるんです。
逆に怒りや悲しみなどネガティブな感情を表現するシーンでは、暗めのトーンを選択します。カケアミや砂目の雰囲気トーンでざらっとした質感を出すことで、モヤモヤした感情を同時に表現できるんです。シンプルな表現の場合は、背景全面をベタで塗ったり、グラデーショントーンを貼る方法もあります。
驚きのシーンでは、集中線やフラッシュを使用して勢いを表現します。イナズマフラッシュを使えば、激しい驚きの感情を迫力ある画面で演出できます。ときめきシーンでは、より幻想的な雰囲気トーンを使い、ふわふわと光る効果で心理描写を深めます。
背景をベタか濃いトーンにして、ふわっと光らせることで、ホッとする一言や緊張を緩める癒しの効果を演出できます。心象表現として、キャラクターの感情や心の動きを背景の光や色彩を通じて視覚的に表現する手法も、読者の感情移入を促すために効果的です。
雰囲気トーンの演出方法 - マンガコース ブログでは、場面に合わせたトーン選びのコツが詳しく紹介されています。
トーンを削る技術は、繊細な表現を可能にする重要なテクニックです。削る際の角度は22.5度が最適で、45度と90度は点が列ごと削れてしまうため避けるべきとされています。方向を変えて線を重ねていくことで、美しいグラデーションを作り出せるんです。
カッターを使った削り方以外に、砂消しゴムを使う方法もあります。砂消しゴムはトーンの点をこすってぼかせるため、柔らかい表現に向いています。髪の毛の先のように細かい部分は、線に沿って切り抜くよりも削ってしまう方が楽で、カッターを寝かせてフィルムに印刷された点を削り取るイメージで動かします。
デジタルでのグラデーショントーン作業では、グラデーションレイヤーのマスク機能を活用します。自動選択ツールで範囲を作成し、ペンツールや消しゴムツールでマスクを操作することで、トーンを削るような表現が可能です。この方法なら、アナログのような削りカスが出ず、やり直しも簡単にできます。
参考)【マンガの描き方】デジタルでトーンを貼る方法を解説!
グラデーショントーンは部分的に貼ることもでき、オブジェクトツールで移動や回転も自由に行えます。濃淡の調整は描画色の選択で細かくコントロールでき、光の表現や立体感の演出に活用できるんです。
参考)トーンの使い方・グラデーション(モノクロ原稿)編 href="https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/1114" target="_blank">https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/1114quot;マンガ用…
アナログ作業では、トーンを削る前にあて紙をかぶせてトーンへらでこすり、しっかり圧着させることが重要です。原稿に定着していないと後で剥がれてしまう可能性があるため、端が剥がれそうな部分にはメンディングテープを上から貼っておくと安心です。
トーンの使い方・グラデーション(モノクロ原稿)編には、デジタルでのグラデーション作成方法が段階的に解説されています。
デジタルツールを活用することで、トーンワーク作業を大幅に時短できます。特に背景トーンや柄トーンを使えば、空やキラキラとしたバックの描き込み時間を削減でき、締切間近でも心強い味方になるんです。
効率的な作業手順として、まず基礎トーン(肌や影の基本的なトーン)だけを先に貼ってしまう方法があります。これにより右脳と左脳の切り替え回数が減り、白いところにトーンを貼るより立体が掴みやすくなるため、やり直しが少なくなります。さらにトーンの貼りすぎを防げる効果もあるんです。
参考)作画作業、時短したい!|月詠れん
クリスタでの作業では、「選択範囲レイヤー」や「マスク機能」を使うことで効率が上がります。該当トーンレイヤー上で使いたい選択範囲の部分を、なげなわ塗りすることで、クリックひとつでトーンが貼られます。この方法はめちゃくちゃ早く、脳死で作業できるのが利点です。
参考)【ClipStudio】漫画原稿のベタとトーン作業を素早く行…
「囲って塗る」ツールをカスタマイズして使ったり、選択範囲の参照先の設定を調整することで、さらなる時短が可能になります。閉じていない部分が多い領域の選択には「クイックマスク」を使い、「トーン領域表示」でトーン領域を可視化しながら作業すると、貼り忘れや重複を防げます。
アナログ作業でも、トーンを大きめにカットしてから細かく調整する手順を守ることで、無駄を減らせます。力を入れすぎると台紙や原稿まで切れてしまうため、カッターやデザインナイフは30度の角度で使うと、先が鋭いので細かい部分もカットしやすくなります。
【ClipStudio】漫画原稿のベタとトーン作業を素早く行う方法では、初心者向けのクリスタ機能活用法が紹介されています。
アシスタントに依頼する場合は、トーン指定を先に作っておくことで、指示の明確さに繋がり、作業の見える化ができます。ただし、トーン指定を作る時間すらない場合には、この方法は活用できないので注意が必要です。
実際のプロの現場では、ペン入れ・ツヤベタ・スクリーントーン・効果線といった工程を分けて進めることで、効率的に作画できます。egacoなどの講座では、マンガ制作の現場で活躍してきたプロの講師による実践的な技術指導を受けられ、最新のクリスタを使ったトーン表現なども学べるんです。