空気感の描き方|漫画の雰囲気を演出する技法とコツ

空気感の描き方|漫画の雰囲気を演出する技法とコツ

漫画で雰囲気が伝わる絵を描くには、空気感の表現が欠かせません。時間帯や気温、風といった要素をどう描けば、読者に伝わる空気感が生まれるのでしょうか?

空気感の描き方と基本技法

この記事のポイント
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時間帯の表現

光の色とコントラストで朝・昼・夕の空気感を描き分ける

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空気の層の活用

白色や薄い青色を重ねて距離感と奥行きを表現する

🎨
空気遠近法の応用

遠景ほどコントラストを弱め、ぼかして立体感を生む

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漫画で「空気感」を表現できると、読者が作品世界に入り込みやすくなります。空気感とは、時間帯や気温、風といった五感で感じる要素を視覚情報だけで伝える技術なんです。漫画制作の現場では、キャラクターや物語だけでなく、その場の雰囲気を描くことで作品の完成度が大きく変わります。
参考)情景イラストの見栄えが変わる!空気感の出し方と資料集めのコツ…

空気感を描く基本は「空気の層」を意識することです。キャラクターと背景の間には透明な空気の層が存在し、距離が遠いほどその層は厚くなります。この層を白色や薄い青色で表現すると、のっぺりした印象だった絵に自然な距離感が生まれるんです。
参考)簡単にイラストを上手く見せるテクニック -空気の層編-

もう一つ重要なのが「空気遠近法」という技法です。遠くにあるものほどぼんやり曖昧に、手前にあるものほどはっきり見せることで、画面に奥行きが生まれます。この方法を使えば、キャラクターから背景まで、それぞれの位置関係を明確に表現できるようになります。
参考)仕上げに差が出る!背景エフェクト講座【デジタル】

プロの漫画家やイラストレーターは、こうした技法を組み合わせながら読者の心に残る作品を生み出しています。​

空気感の描き方における時間帯の表現テクニック

時間帯を描き分けるには、光の色とコントラストの調整が鍵になります。朝から昼にかけては黄色や青白い系統の光を用い、夕方前には陽が傾き始めた雰囲気を出すためオレンジ系の光を選びます。夕方になるとより強いオレンジや赤系統の光を使うことで、時間の移り変わりを表現できるんです。​
日差しの強さによってもコントラストが変わります。晴れた日中は太陽光が強く、明部と暗部のコントラストがはっきりつくため、明暗の境界が鮮明になります。逆に曇りの日は太陽光が弱いため、コントラストは低く彩度も落ちて全体的にぼんやりした印象になります。こうした違いを意識するだけで、同じシーンでも時間帯や天候の違いを表現できます。​
実践的な例として、朝の清々しさを出したいなら青白い光と柔らかなコントラストを、真夏の昼間なら強い日差しと濃い影を描くといった使い分けができます。時間帯の描写は読者が体感してきた記憶と結びつくため、説得力のある空気感を生み出せるんです。​
専門家による空気感の表現方法について、さらに詳しい解説が読めます。

 

情景イラストの見栄えが変わる!空気感の出し方と資料集めのコツ

空気感の描き方で活かす空気の層の重ね方

空気の層を描く際は、背景とキャラクター双方に適用することで自然な一体感が生まれます。まず背景に空気の層を重ねる時は、キャラクターから背景までの距離を意識します。距離が遠ければ遠いほど空気の層は厚くなるため、白色や薄い青色を塗り重ねて距離感を表現するんです。​
キャラクター自体にも空気の層を薄く重ねることで、背景との馴染みが良くなります。具体的には、キャラクターの奥側にある手足に薄い青色を重ねると、情景と調和しながら立体感も出せます。ほんの僅かな調整ですが、この一手間で絵全体にこなれた雰囲気が加わるんです。​
空気の層を加えるメリットは、背景を無駄に描き込まずに済むため制作時間の短縮にもつながることです。情報量が多すぎると視線が分散してしまいますが、空気の層で遠景をぼかせば「背景はあるのにキャラクターに目が行く」まとまりのあるイラストが完成します。プロの現場でも頻繁に使われる、効率的で効果的な技法なんです。​
空気の層を使った具体的なテクニックについて、実例を交えた解説があります。

 

簡単にイラストを上手く見せるテクニック -空気の層編-

空気感の描き方における空気遠近法の実践

空気遠近法は、物体との間にある空気(大気)の層が遠くのものほど分厚くなる理屈を利用した遠近感の表現方法です。空気中には目に見えないチリや水蒸気といった不純物が存在し、距離が離れるほど空気中の不純物の濃度が高くなって視界に影響を与えます。そのため遠景のものほどかすみがかったように見え、コントラストが弱く淡い表現になるんです。
参考)空気遠近法を理解すると遠近感のある広大な背景が描けるようにな…

具体的な表現方法として、遠景になるほどコントラストを弱くし、物と物の境界もぼんやりとぼやけた描写にします。晴れた日中に遠くの山を見ると青みがかって見える現象も、空気遠近法で説明できます。青色の光が空気中の分子に乱反射しやすいため、遠景のものは青みを帯びて見えるんです。​
大原則として覚えておきたいのは「近景の影の色よりも、遠景の影の色のほうが明るくなる」ということです。このコントラストの関係が逆になると絵全体のバランスが崩れてしまうため、注意が必要になります。空気遠近法を使えば、広大な景色や外の空間を描く際に欠かせない距離感と空間の広がりを表現できます。​

空気感の描き方で風と動きを表現する方法

風の表現は、空気感を演出する上で画面の見栄えを大きく左右する要素です。風を描くには「揺れや舞うもの」を活用するのが基本で、キャラクターの髪やスカート、空中を舞う落ち葉や塵などで風の存在を表現します。落ち葉をぼかすことで舞っている様子を描写でき、動きのある空気感が生まれるんです。​
風向きを意識することもポイントになります。風の表現を入れるだけで画面の見栄えがグッと良くなるため、無風を表現したい時以外は風の表現を入れた方が効果的だと言われています。実際、プロのイラストレーターの多くは風の要素を積極的に取り入れることで、静止画でありながら時間の流れや空気の動きを感じさせる作品を制作しています。​
風以外にも、気温や湿度といった要素をモチーフで表現する方法があります。紅葉とキャラクターの服装を組み合わせれば秋の気温感が伝わりますし、夏のモチーフを入れれば暑さ、冬のモチーフを入れれば寒さが伝わります。これらの工夫を組み合わせることで、読者の五感に訴えかける豊かな空気感を描けるようになるんです。​

空気感の描き方で光と影のコントラストを調整するコツ

光源の位置と距離によって、影のつき方やコントラストは大きく変化します。光源が近い距離にあるものほど明暗のコントラストは強くなり、明暗の境界線がくっきりして力強い印象を与えます。逆に光源から遠い距離にあるものほどコントラストは弱くなり、明暗の境界線が曖昧になって全体的にぼんやりとした印象になるんです。
参考)立体感アップ!光と影の付け方

何が光源になっているかによっても、光と影の色や全体の色味が変化します。太陽、月、ろうそく、照明など、光源の種類によって作品のムードが大きく変わるため、描きたいシーンに合わせて光源を選ぶことが重要です。たとえば太陽光なら明るく開放的な雰囲気、月明かりなら静謐で神秘的な雰囲気を演出できます。​
影の落ち方にも注目すると、さらにリアリティが増します。光源が強いほどはっきりとした落ち影ができ、影を作っている物体に近い場所では落ち影のエッジがはっきりしますが、物体から遠ざかるほどエッジがぼけていきます。こうした細かな描写を意識するだけで、キャラクターやシーンを何倍もドラマチックに演出できるようになります。​
日常風景の観察から学べる光と影の挙動について、実践的な資料集めのコツも紹介されています。晴れた日と曇りの日、朝と夕方で明暗のコントラストや色味がどう変わるかを観察し、資料として撮影しておくと、説得力のある空気感を描く武器になるんです。​

空気感の描き方における心理描写との連動

情景描写は単なる背景ではなく、登場人物の心の動きとリンクさせることで、より印象に残るシーンになります。たとえば明るく晴れた日差しの中でも、キャラクターが落ち込んでいれば影や曇りを意図的に強調することで、心情を表現できるんです。悲しい場面では雨や夕暮れ、楽しく高揚した場面では光や花を取り入れるなど、心の動きと場面をつなげる工夫が効果的です。
参考)情景描写の例文から学ぶ漫画表現のコツと画材選びで広がる世界

漫画ではトーンや色を使い分けることで、同じシーンでも雰囲気を柔軟に変化させることができます。トーンはグレーの濃淡や模様を貼ることで、光や影、質感の違いを表現する道具です。輪郭をぼかしたり、グラデーションを加えることで、朝靄や夕暮れのやわらかな雰囲気を表現しやすくなります。​
五感を活用した情景描写も、臨場感を高める重要な要素です。視覚だけでなく、聴覚や触覚、嗅覚などを意識すると、読者が体感できる空気感が生まれます。雨で濡れたアスファルトのにおい、遠くから聞こえる鳥の声、風に触れる感覚など、セリフやモノローグで「冷たい風が肌を刺す」と補足しながら、背景の線やトーンで風の流れや空気の湿度を感じさせる工夫を取り入れるといいんです。こうした演出が読者の想像を刺激し、作品に深みを持たせます。​