遠心力向心力違いを円運動で理解

遠心力向心力違いを円運動で理解

遠心力と向心力は大きさが同じでも、観測者の立場で働き方が変わる物理法則なんです。円運動において外から見るか内から見るかで、まったく異なる力として感じられるのをご存知ですか?

遠心力向心力違い

この記事のポイント
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観測者の立場で変わる力

遠心力と向心力は観測者が静止しているか、回転しているかで見え方が変わる力です。

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大きさは等しく方向が逆

両者の大きさは mrω² で同じですが、円の中心向きか外向きかという違いがあります。

⚠️
同時には現れない

向心力と遠心力は同じ現象を異なる視点で見たものなので、同時に考えてはいけません。

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遠心力と向心力の基本的な違い

遠心力と向心力の最大の違いは、観測者がどこにいるかによって決まります。静止した地面から円運動を見ている場合、物体には円の中心に向かう向心力が働いていると考えますが、物体と一緒に回転している観測者から見ると、円の外側に押し出されるような遠心力を感じるんです。
参考)遠心力とは?簡単な公式と求め方を紹介!向心力・向心加速度の補…

物理学的に言うと、向心力は実際に物体に作用している力で、円運動を引き起こす原因となっています。一方で遠心力は、回転座標系における慣性力であり、見かけ上の力とされます。つまり遠心力は、加速している観測者の立場から「静止しているように見える状況」を説明するために導入される力なんですね。
参考)向心力と遠心力はつり合うか?

項目 向心力 遠心力
観測者の位置 静止系(地面など) 回転座標系(物体と一緒)
力の向き 円の中心向き 円の外向き
力の性質 実際に働く力 見かけの力(慣性力)
運動への影響 円運動を引き起こす 回転系での力のつり合いに寄与

自動車がカーブを曲がるときに、乗っている人が外側に押し付けられる感覚は遠心力によるものです。しかし地面で静止している人から見れば、ドアからの抗力が向心力となって車内の人を円運動させているだけなんです。​

遠心力向心力の公式と計算方法

遠心力と向心力の公式は、まったく同じ形をしています。質量 m の物体が半径 r の円運動をしているとき、角速度を ω、速度を v とすると、どちらの力の大きさも次の式で表されます。
参考)https://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/physics/category/mechanics/motion/rotational_motion/henkan-tex.cgi?target=%2Fmath%2Fphysics%2Fcategory%2Fmechanics%2Fmotion%2Frotational_motion%2Fcentrifugal_force.html

F = mrω² = mv²/r
この公式が同じなのは、遠心力が向心力と大きさが等しく方向が逆向きの力だからです。向心加速度の大きさは a = rω² = v²/r で表され、運動方程式 F = ma に代入すると向心力が求められます。
参考)円運動とは|円運動における加速度・向心力・遠心力

計算例を見てみましょう。質量 2kg の物体が半径 0.5m の円周上を角速度 4 rad/s で回転している場合、向心力(遠心力)の大きさは次のようになります。

 

  • F = mrω² = 2 × 0.5 × 4² = 16 N
  • この力が円の中心向きに働くのが向心力、外向きに感じるのが遠心力

実際の物理現象で向心力として働くのは、糸の張力、重力、摩擦力、垂直抗力など、状況によってさまざまです。例えば人工衛星の場合は万有引力が向心力となり、円運動を引き起こしています。
参考)301 Moved Permanently

遠心力と向心力はつり合わない理由

多くの人が誤解しやすいポイントですが、向心力と遠心力は同時に存在してつり合っているわけではありません。この二つの力は、同じ現象を異なる座標系から見た結果であり、同時に考えてはいけないんです。​
もし遠心力と向心力がつり合っているとしたら、ニュートンの慣性の法則により、物体は等速直線運動をするはずです。しかし実際には円運動を続けているので、この考え方は間違っていることがわかります。​

  • 静止系から見た場合:向心力だけが存在し、遠心力は考えない
  • 回転系から見た場合:遠心力が存在し、向心力とは別の力(張力など)とつり合う

人工衛星の例で考えてみましょう。地球外で静止している観測者から見ると、人工衛星には万有引力だけが働いていて、それが向心力となって円運動を引き起こしています。この場合、遠心力は存在しません。​
一方、人工衛星に乗っている宇宙飛行士の視点では、自分は静止していると感じます。この立場では万有引力と遠心力がつり合っており、だからこそ飛行士は「無重力状態」を経験するんです。​

遠心力が慣性力である意味

遠心力は慣性力の一種として分類されます。慣性力とは、加速度運動している座標系において、物体が静止しているように見えるようにするために導入される見かけの力のことです。
参考)円運動の公式まとめ(運動方程式・加速度・遠心力・向心力)

電車が加速するとき、乗客は後ろに押し付けられるような感覚を受けますよね。これも慣性力の一例です。電車という加速する座標系にいる乗客には、実際には力が働いていないのに、まるで後方に力が働いているように感じられるんです。
参考)遠心力ってどんな力

特徴 実際の力 慣性力(遠心力含む)
作用・反作用の法則 常に反作用が存在 反作用が存在しない
座標系依存性 どの座標系でも存在 非慣性系でのみ現れる
物理的実在性 物体間の相互作用 座標系の選び方による

遠心力が慣性力である証拠として、反作用が存在しないことが挙げられます。通常の力には必ず作用と反作用がペアで存在しますが、遠心力にはそれがありません。これは遠心力が実際の相互作用ではなく、座標系の選び方によって現れる数学的な力だからです。
参考)見かけの重力・遠心力 – 学習のトリセツ

回転運動に関する説明を簡単にするため、物理学では回転運動に伴う慣性力を特別に「遠心力」と呼んでいます。回転している当事者にしか感じられない見かけ上の力なんです。​

漫画作画での遠心力表現テクニック

漫画でキャラクターが回転運動をする場面を描くとき、遠心力と向心力の理解が表現の説得力を高めます。読者は物理法則を直感的に感じ取るので、正しい力の表現が臨場感を生み出すんです。

 

回転ブランコや遊園地のアトラクションのシーンでは、キャラクターの髪や服が外側に流れる描写が効果的です。これは遠心力によって物体が円の外側に押し出される効果を視覚化したものですね。糸でつながれた物体が回転する場面では、糸が常に中心方向に張っている様子を描くことで、向心力が働いていることを表現できます。​
スピード感を出すためのテクニックとして、次のような描写が使えます。

 

  • 効果線を円の接線方向に引いて、速度ベクトルを表現する
  • キャラクターの体が円の外側に傾く姿勢で、遠心力を受けている感覚を示す
  • 回転の中心から放射状に伸びる効果線で、向心力の方向を暗示する

カーチェイスのシーンで車がカーブを曲がるとき、車内のキャラクターがドア側に押し付けられる描写は定番です。この際、外から見た視点と車内視点を交互に描くことで、向心力と遠心力の違いを読者に伝えられます。外からの視点では車が円運動していることを強調し、車内視点ではキャラクターが横方向の力を受けている様子を描くんです。​
重力と遠心力が組み合わさるシーン、例えば回転する宇宙ステーションの内部では、キャラクターが床に立っている様子を描くことで人工重力を表現できます。実際には遠心力が外向きに働き、それが重力の代わりになっているという物理現象を視覚化しているわけです。​
参考:物理的に正確な円運動の解説
円運動 ( 向心力、遠心力、慣性力 )について
参考:向心力と遠心力の使い分けについての詳細
遠心力とは?簡単な公式と求め方を紹介!向心力・向心加速度の補足説明付き