
坂道を描く際に最も重要なのは、通常の平面とは異なる「傾斜の消失点」を理解することです。一般的なパース(透視図法)では、アイレベル(目線の高さ)上に消失点を設定しますが、坂道のような傾斜面を描く場合は、別の消失点が必要になります。
傾斜の消失点(垂直消失点・VVPとも呼ばれる)は、アイレベル上の通常の消失点から垂直に線を引き、その線上に配置します。この位置関係を守ることが、自然な傾斜表現の鍵となります。
傾斜の消失点をアイレベルから離せば離すほど、坂道の角度は急になります。逆に、アイレベルに近づけると緩やかな坂になります。この関係を理解すれば、様々な角度の坂道を自在に描けるようになります。
※最初、消失点とかアイレベルとか、透視図法とかって、私はイマイチイメージできなかったです。
絵で解説しているアンリミ本(漫画の背景の描き方)がわかりやすかったです。
1点透視図法で坂道を描く手順を詳しく見ていきましょう。
この手順を繰り返すことで、道の両端や建物の配置など、坂道全体の構図を作り上げることができます。特に漫画の背景では、キャラクターの動きや物語の展開に合わせて、坂道の角度や方向を調整することが重要です。
より複雑な構図を描きたい場合は、2点透視図法を使った坂道の描き方も覚えておくと便利です。2点透視では、アイレベル上に2つの消失点(VP1とVP2)を設定します。
2点透視での坂道の描き方は以下の通りです:
2点透視の場合、注意すべき点は「両方向に傾斜をつけない」ことです。VP1方向とVP2方向の両方に傾斜をつけると、非常に不自然な坂道になってしまいます。実際の坂道は基本的に一方向にのみ傾斜しているため、片方の消失点だけに傾斜用の消失点を設定するようにしましょう。
坂道のパース技術は、階段や屋根など他の傾斜構造物にも応用できます。
階段の描き方:
屋根の描き方:
これらの応用例では、基本となる坂道のパース技術をベースにしながら、それぞれの構造物の特性に合わせた調整を加えることがポイントです。例えば、階段では各段の高さを均等にするための工夫が必要ですし、屋根では傾斜角度を現実的な範囲に収める必要があります。
パースの基本を押さえた上で、漫画表現として坂道を効果的に活用する方法を考えてみましょう。
感情表現としての坂道:
坂道は単なる背景要素ではなく、ストーリーテリングの重要な要素になり得ます。上り坂は努力や困難、希望などを象徴し、下り坂は落胆や解放感を表現できます。パースの角度を意図的に強調することで、キャラクターの心情をより効果的に伝えることができます。
遠近感の強調:
坂道のパースを誇張することで、距離感や空間の広がりを強調できます。特に見上げる構図や見下ろす構図では、傾斜の消失点をアイレベルから大きく離すことで、より劇的な効果を生み出せます。
都市景観の表現:
日本の都市部、特に東京や神戸などには印象的な坂道が多くあります。これらを背景に取り入れることで、物語の舞台をより具体的に、そして魅力的に描写できます。坂道の両側に建ち並ぶ建物も、同じパース原理で描くことで統一感のある風景を作り出せます。
アクションシーンでの活用:
追跡シーンや疾走感を表現したいシーンでは、坂道のパースを利用することで、スピード感や緊張感を高められます。特に下り坂のシーンでは、消失点を大きく下げることで加速感を表現できます。
坂道のパースを理解し、それを物語の一部として活用することで、単なる背景描写を超えた表現が可能になります。技術的な正確さと表現としての誇張のバランスを取りながら、独自の坂道表現を追求してみてください。
坂道のパースを学ぶ過程で、多くの初心者が陥りがちな間違いとその解決法を紹介します。
間違い1: 傾斜の消失点を適当に配置する
間違い2: 傾斜の角度が現実離れしている
間違い3: 2点透視で両方向に傾斜をつける
間違い4: 坂道上の物体のパースが合っていない
間違い5: 坂道の始点と終点の高さ関係が不自然
これらの間違いを意識し、正しいパースの原理に基づいて描くことで、より自然で説得力のある坂道表現が可能になります。最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し練習することで徐々に感覚が身についていきます。
パース理論を学ぶ際の参考になる詳しい解説はこちらでも確認できます:
パースでの傾斜の消失点について詳しく解説されたサイト