ピクシス司令官は駐屯兵団の司令官として、人類領土南部の最高責任者を務めていました。巨人との戦いの最前線に立ち、壁の防衛を担当する重要な役職に就いていたのです。彼の役割は単なる指揮官にとどまらず、人類の存亡に関わる重大な決断を下す立場にありました。
トロスト区への巨人侵攻時には、有力者・バルト侯のチェス相手をしていましたが、急報を聞いて即座に現場へ向かい、自分の守備を命じたバルト侯の求めを無視するなど、人類全体の利益を優先する姿勢を見せています。
ピクシス司令官は「生来の変人」とも呼ばれていました。その理由は、彼の飄々とした言動にあります。壁の上から巨人たちを眺めて「超絶美女の巨人になら喰われてもいい」と語るなど、常識では考えられない発言をすることがありました。
また、酒好きとしても知られ、前線でもスキットルを持ち歩いて隠れて飲むという習慣がありました。しかし、このような一見奇妙な言動の裏には、常に冷静な判断力と人類を守るための強い意志が隠されていたのです。
ピクシス司令官の最も顕著な功績の一つが、トロスト区奪還作戦での大胆な決断です。アルミンが提案した「巨人化したエレンの能力で大岩を運び、扉の穴を塞ぐ」という作戦を採用しました。
多くの兵が巨人を味方にすることに不満をぶつける中、ピクシスはその作戦が名案であることを見抜き、兵士たちにトロスト区を奪還することの重要性を説きました。彼は兵士たちの前で感動的な演説を行い、「巨人の恐ろしさを知った者はここから去るがいい!そして!!その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟、愛する者にも味わわせたい者も!!ここから去るがいい!!」と述べ、兵士たちの戦意を高めることに成功しました。
この決断により、人類は2割の兵を失いながらも、トロスト区の穴を塞ぐことに成功し、大きな勝利を収めることができたのです。
ピクシス司令官は、調査兵団を率いるエルヴィン団長から王政打倒の協力を求められた際、最初は武力による革命に否定的な姿勢を示しました。しかし、エルヴィンの提案を受け、王政に人類を守る意思があるかを試すために計画を進めることになります。
ピクシスは「ウォール・ローゼが巨人によって突破された」という誤報を流し、王政幹部の反応を見ました。貴族たちが自分たちの保身のためにウォール・シーナを閉鎖するよう命じたことで、王政には人類を守る気がないと確信したピクシスは、ザックレー総統と共にクーデターを開始しました。
この行動により、兵団はほとんど血を流すことなく王政の打倒に成功し、人類の未来に大きく貢献したのです。
兵団トップであるザックレー総統が爆殺された後、実質的な兵団トップとなったピクシスは、壁内で血を流している場合ではないと判断し、ザックレーの殺害を不問にしてイェーガー派に恭順することを決めました。この決断は、さらなる内部分裂を避け、人類の団結を図るためのものでした。
しかし、この決断が彼の最期につながることになります。イェレナがピクシスら兵団幹部に振舞ったワインの中には、ジークの脊髄液が入っていたのです。ジークの脊髄液を飲んだエルディア人は、ジークの「叫び」を合図に無垢の巨人へと変えられてしまう運命にありました。
マーレ軍の侵攻による混乱の中、牢から解放されたピクシスは、巨人化の恐怖を抱えながらも勇敢に戦い抜きました。しかし、追い詰められたジークが「叫び」を発動したことにより、ピクシスは巨人化することになります。
酒瓶を片手にその瞬間を迎えたピクシスは、自分の運命を悟って静かに目を閉じました。知性のない無垢の巨人と化したピクシスは、最終的に部下であったアルミンによって討ち取られるという悲劇的な最期を迎えたのです。
ピクシス司令官の特徴の一つは、その柔軟な思考と決断力にありました。彼は部下であっても素晴らしい作戦を提案した場合には、それを採用することを躊躇いませんでした。アルミンの作戦を採用したのもその一例です。
また、王政打倒の際には、武力による革命ではなく、王政の本質を暴くための計略を用いるという賢明な判断を下しました。これらの決断からは、ピクシスが単なる命令者ではなく、状況を冷静に分析し、最善の道を選ぶ指導者であったことがうかがえます。
ピクシス司令官は、トロスト区奪還作戦の際、部下の甚大な犠牲も覚悟しており、自身を「殺戮者」として腹をくくっていました。これは、彼が人類全体の存続のためには、時に厳しい決断も必要だと理解していたことを示しています。
また、ザックレー総統暗殺後にイェーガー派に恭順したのも、内部分裂による更なる犠牲を避けるための決断でした。彼の行動の根底には常に「人類全体の利益」という考えがあり、それが彼の真意だったと言えるでしょう。
ピクシス司令官の功績を振り返ると、彼が常に人類全体の利益を考えて行動していたことが分かります。トロスト区奪還作戦での大胆な決断、王政打倒への関与、そして最後までの勇敢な戦いは、彼の人類への忠誠心を示すものでした。
彼は「変人」と呼ばれながらも、その飄々とした態度の裏には、人類を守るための強い意志と冷静な判断力が隠されていたのです。
ピクシス司令官の最期は、彼の人間性をよく表しています。巨人化の恐怖を知りながらも、最後まで人類のために戦い続け、自分の運命を悟った時には静かに受け入れました。
酒瓶を片手に巨人化する瞬間を迎えたピクシスの姿は、彼の生き様そのものを象徴しているようです。飄々としながらも、最後まで自分の役割を全うしようとした彼は、間違いなく人類の味方であり、真の英雄だったと言えるでしょう。