
表情はこの本を参考に描いています。
サウダージとは、ポルトガル語に由来する言葉で、単なる「懐かしさ」を超えた複雑な感情を表します。日本語の「郷愁」や「望郷」に近いものの、そこには喜びと悲しみが入り混じった独特の感情が含まれています。この感情は「ある対象を失ったことへの悲しみと、それを経験できたことへの幸福感が同時に存在する状態」と言えるでしょう。
マンガやイラストでこのような繊細な感情を表現するには、単純な「喜怒哀楽」の枠を超えた表現技術が必要です。2025年1月に公開された感情表現の専門資料によると、サウダージに関連する体(フィジカル)の反応には以下のようなものがあります。
また、心(メンタル)の反応としては以下が挙げられています。
これらの要素を理解することが、サウダージという複雑な感情を漫画で表現する第一歩となります。
サウダージの感情を表情で表現するには、顔のパーツごとの描き方が重要です。特に目と口元の表現が感情を伝える鍵となります。
目の描き方
眉の描き方
口元の表現
これらのパーツを組み合わせることで、サウダージの感情を効果的に表現できます。2024年9月に発売予定の「キャラクターの豊かな感情表現の描き方」では、約1,000点もの表情パターンが紹介されており、微妙な感情の違いを描き分ける参考になります。
また、年齢や性別によっても表情の表れ方は異なります。老若男女のキャラクターそれぞれに適した表情の描き方を研究することで、より説得力のある感情表現が可能になるでしょう。
サウダージのような複雑な感情は、顔の表情だけでなく全身を使って表現することでより効果的に伝わります。プロの漫画家たちは、キャラクターの姿勢や仕草を通じて感情の機微を表現しています。
特徴的な姿勢
手や指の動き
その他の体の表現
これらの全身表現と表情を組み合わせることで、読者に「サウダージ」の感情をより深く伝えることができます。漫画の場合は、複数コマを使って時間の流れと共に感情の変化を表現することも効果的です。
例えば、「思い出の品を見つける → 手に取る → 目を閉じる → 微笑む」といった一連の流れを描くことで、サウダージの感情が読者に伝わりやすくなります。
サウダージは単体で存在することもありますが、多くの場合、他の感情と混ざり合って複雑な表情となります。このような感情の混合を表現することで、キャラクターにより深みを持たせることができます。
サウダージと喜びの混合
サウダージと切なさの混合
サウダージと決意の混合
2018年に出版された「キャラの気持ちの描き方」では、従来の「喜怒哀楽」に「驚き」「虚しい」という感情を加え、さらに人に関係する諸々の「気」の表現まで踏み込むことで、人の細やかな心の動きを表現する方法が紹介されています。このような複合的な感情表現を学ぶことで、サウダージのような複雑な感情もより豊かに描けるようになるでしょう。
サウダージという感情を効果的に表現するには、キャラクターの表情や仕草だけでなく、背景や小物の活用も重要です。これらの要素がキャラクターの内面を視覚的に補強し、読者の共感を引き出します。
効果的な背景表現
感情を引き立てる小物
コマ割りと演出
これらの要素を組み合わせることで、サウダージの感情をより立体的に表現できます。例えば、窓辺に座ったキャラクターが古い手紙を読みながら、窓の外には夕暮れの空が広がっている…といった構図は、言葉で説明しなくても「懐かしさと切なさが入り混じった感情」を読者に伝えることができます。
プロの漫画家は、このような背景や小物の配置に細心の注意を払い、キャラクターの内面を視覚的に表現しています。2025年2月に発売された「香川久が全力で教える「表情」の描き方」では、感情の演出について「キャラクター性を意識した表情のつけ方や感情を伝えるための演出方法」が紹介されており、背景や小物の活用法についても詳しく解説されています。
サウダージのような繊細な感情を表現する際は、これらの要素を意識的に取り入れることで、より深みのある作品に仕上げることができるでしょう。