「サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話」のウチムラと悪魔軍の同盟国との関係性に違和感を感じる理由

現代的価値観と異世界の価値観の衝突

「サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話」を見ていると、主人公ウチムラデンノスケと魔王軍の同盟国との関係性に違和感を覚えることがあります。この違和感は、現代社会で培われたサラリーマン的価値観と、異世界の封建的な価値観の間に生じる摩擦から来ているのではないでしょうか。

ウチムラは元々ブラック企業で働いていた冴えないサラリーマンでした。海外に左遷されるなど厳しい環境で働いていた彼が、突如として異世界に召喚され、魔王軍の四天王という高位の地位に就くことになります。この急激な立場の変化自体が、視聴者に違和感を与える第一の要因です。

ウチムラは「水を司る四天王」として、「海外の駐在員」という肩書きで魔王軍に加わります。彼はサラリーマン時代に培った交渉力や管理能力を活かして魔王軍の改革に取り組みますが、その現代的なビジネスアプローチが異世界の同盟国との外交において齟齬を生じさせているように感じられます。

特に違和感を覚えるのは、ウチムラが現代の企業間取引のような合理性を求めて交渉を進める一方で、同盟国側は名誉や伝統、血縁関係などの前近代的な価値観に基づいて行動している点です。この価値観の違いが、視聴者に「何かがしっくりこない」という感覚をもたらしているのではないでしょうか。

また、ウチムラの魔王に対する忠誠心も違和感の一因かもしれません。ウチムラは「自身を認めてくれた魔王に対してはある種狂的なまでに忠誠心を抱いている」と描写されています。これは日本的な「恩義」の感覚に近いものがありますが、同盟国の価値観では理解されにくい部分があるでしょう。

魔王は「冷静沈着で先見の明があり、部下たちへの気配りも完璧など様々な面で優れている」という理想的な上司像として描かれていますが、これは現代日本の理想的な経営者像に近く、異世界の支配者としては違和感があります。

しかし、この違和感こそが作品の魅力の一つとも言えます。「サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話」は、現代社会の価値観を持った主人公が異世界でどう振る舞うかを描くことで、私たちの社会や働き方を逆照射しているのです。

ウチムラが「特別な能力は何も無い」にもかかわらず、サラリーマン時代の経験と知恵で異世界の難題に立ち向かっていく姿は、すべての働く人たちに共感を与えるメッセージとなっています。

違和感を感じつつも、この作品が「すべての働く人たちに贈る異世界転職譚」として多くの視聴者の心を掴んでいるのは、その違和感の中に現代社会を生きる私たちの姿が映し出されているからなのかもしれません。