『SAKAMOTO DAYS』に登場する南雲は、主人公・坂本太郎のJCC(殺し屋養成機関)時代の同期であり、非常に優れた戦闘能力と情報分析力を持つ殺し屋です。軽妙な態度と飄々とした性格が特徴的ですが、その裏には鋭い洞察力と冷静な判断力を秘めています。
南雲は坂本太郎、赤尾リオンと共に「問題児トリオ」と呼ばれ、JCCでの訓練やミッションを共にこなしてきました。3人は校外学習をサボって9時間も戦闘したり、電車の窓やつり革を破壊したりするなど、数々の問題行動で知られていました。しかし、その実力は折り紙付きで、JCCの中でも特に優秀な生徒たちでした。
南雲と赤尾リオン、そして坂本太郎の3人は強い絆で結ばれており、互いの実力を認め合いながら成長していきました。特に南雲とリオンの関係は深く、普段ふざけた態度を取ることが多い南雲も、リオンが困ったときには真っ先に駆けつけ、彼女を守ろうとする姿が描かれています。
赤尾リオンは『SAKAMOTO DAYS』において、非常に特徴的な能力を持つキャラクターとして描かれています。彼女の最大の特徴は「殺道(ころしみち)」を見る能力です。これは赤尾家に代々伝わる特殊な眼の力で、相手の急所までどのように体を動かせばよいかを瞬時に把握することができます。
リオンはこの能力を「パラパラ漫画をめくるように、相手の急所までどこにどう体を置いていけば分かる感覚」と表現しています。この特殊な眼のおかげで、彼女は接近戦において抜群の実力を発揮し、JCCでも屈指の戦闘能力を持つ殺し屋として評価されていました。
また、リオンは単に殺道を見るだけでなく、非常に視力も良く、300メートル先の狙撃手を発見して方角を素早く報告するなど、観察力も優れています。さらに、武器の特性を極限まで活かして戦うスタイルも彼女の特徴で、あらゆる状況に対応できる柔軟な戦闘能力を持っていました。
明るく活発な性格でチームのムードメーカー的存在だったリオンですが、その実力は本物であり、南雲や坂本からも一目置かれる存在でした。
南雲の赤尾リオンに対する感情は、『SAKAMOTO DAYS』の物語において重要な要素となっています。普段は軽妙な態度で周囲を煙に巻くような南雲ですが、リオンに関することになると、その表情や態度が一変します。
南雲はJCC時代からリオンに特別な感情を抱いていたと考えられています。彼にとってリオンは単なる同期以上の存在であり、彼女の失踪が判明した後も執拗に行方を追い続けました。南雲の本当の気持ちは作中では多く語られていませんが、彼の行動を見る限り、彼の中でリオンの存在がいかに大きかったかが分かります。
リオンの失踪後、JCCは彼女の消息について公式には何も発表せず、彼女の存在はなかったことにされてしまいました。しかし、南雲はそれを受け入れることができず、独自に彼女の行方を追い始めます。南雲はJCCの内部に残されたわずかな手がかりをもとに、リオンがどこに消えたのかを調査し続けました。
この執念深さこそが、南雲の本質を表していると言えます。普段は飄々とした態度を取る彼ですが、心の奥底では強い信念を持っており、仲間を奪われた怒りと悲しみを抱えながら行動しているのです。南雲のリオンへの感情が恋愛的なものだったかどうかは明確には描かれていませんが、少なくとも彼女に対する執着は並々ならぬものでした。
赤尾リオンの失踪と死の真相は、『SAKAMOTO DAYS』の物語において大きな謎として描かれてきましたが、20巻173話~175話でついにその全容が明らかになりました。
リオンの失踪は、JCCでの退学回避の任務中に始まりました。坂本、南雲、リオン、有月(スラー)の4人はORDERのキンダカとの戦闘後、殺連会長の妻子の護衛任務を受けることになります。しかし、実は有月は殺連会長の座を奪おうとしている麻樹が送ったスパイでした。
有月は毒状態のキンダカに必要な解毒剤を落とそうとした場面をリオンに目撃され、逃走します。リオンは有月を追いかけ、2人の消息は不明になりました。1年後、有月の居場所が判明し、そこに向かった坂本はリオンが有月に殺されたという事実を知ることになります。
しかし、リオンの死の真相はさらに複雑でした。有月を追いかけたリオンは、有月が家族を人質に取られていることを知り、同情して有月を捕まえに来た殺連員を倒します。2人は有月の家族を救うために逃避行を始めますが、資金不足のためリオンはフリーの殺し屋として稼ぐことになります。
その後、麻樹は有月に接触し、「ある腕の立つ殺し屋を抹殺する」という任務をクリアすれば家族を解放すると交渉します。リオンが最後の任務を受けた頃、彼女は何者かに襲撃されます。戦闘の中でリオンは相手のフードを裂き、正体が有月だと気づきますが、その隙に有月の手で殺されてしまいます。有月は相手がリオンだと気づかずに殺してしまったのです。
つまり、リオンと有月は麻樹に嵌められ、悲劇的な結末を迎えたのでした。
『SAKAMOTO DAYS』において、南雲と有月憬(スラー)の因縁は物語の重要な軸となっています。二人はJCC時代の同期であり、かつては共に厳しい訓練を乗り越えた仲間でしたが、赤尾リオンの死をきっかけに完全に敵対関係となりました。
リオンの命を奪ったのがスラーであることを知った南雲は、彼に対して深い怒りと憎しみを抱くようになります。しかし、その感情の裏には「なぜスラーがリオンを殺さなければならなかったのか?」という疑問もありました。南雲はスラーと戦いながら、彼の真意を探ろうとします。単なる復讐ではなく、リオンの死の意味を知るための戦いだったのです。
南雲とスラーの対決は、物語の中でも非常に重要なシーンとして描かれています。南雲は普段、軽妙な態度で周囲を煙に巻くようなキャラクターですが、スラーと対峙したときだけはその表情が一変し、鋭い殺気を放ちます。
二人の戦闘は激しいものであり、互いの能力を存分に発揮しながら戦います。南雲は高速の戦闘スタイルを駆使し、スラーの攻撃を華麗にかわしながら反撃を繰り出します。一方のスラーも、南雲の動きを読んで的確にカウンターを狙うなど、互角の勝負が展開されました。
この南雲とスラーの因縁は、今後の物語の展開にも大きく影響を与える可能性があります。スラーの真意が明らかになり、南雲がどのような選択をするのか。彼がリオンの死を乗り越え、どのような未来を選ぶのかが、今後の展開のカギとなるでしょう。
南雲の行動の背景には、赤尾リオンが追い求めていた「優しい人が優しいままでいられる世界」という理想があります。リオンは有月の「家族を救うためだとはいえ、君に人を殺してほしくない」という考えを好んでいましたが、同時にそれは現実的には難しいと理解していました。
リオンは「世界は全員に優しく作られていない」と考えていましたが、だからこそ「優しい人が優しいままでいられる世界」を作ろうとしていました。この考えがあったからこそ、彼女は自分だけ手を汚して金を集めたり、昌に殺し屋にならないよう促したりしていたのです。
南雲はリオンの死後、彼女のこの理想を引き継いでいるように見えます。彼の復讐心は単なる怒りや悲しみからくるものではなく、リオンが望んでいた世界を実現するための行動とも解釈できます。南雲はスラーとの戦いを通じて、リオンの死の意味を理解し、彼女の遺志を継ぐ形で自分の道を模索しているのかもしれません。
また、坂本や赤尾のような、大事なものを自分の中ではなく外に置くタイプは、大切な存在がいる方が負けないと思っているという描写もあります。南雲もまた、リオンという大切な存在を失ったことで、より強く、より深く考えるようになったと言えるでしょう。
南雲の今後の選択が、リオンの理想とどのように結びついていくのか、そして彼がどのような「優しさの世界」を追い求めていくのかは、『SAKAMOTO DAYS』の物語の重要なテーマの一つとなっています。
『SAKAMOTO DAYS』における南雲と赤尾リオンの物語は、多くの読者の心を打つ要素を持っています。二人の関係性は単なる同僚や友人を超えた深い絆で結ばれており、リオンの死とそれに伴う南雲の変化は、物語に深みと感動を与えています。
南雲の軽妙な態度の裏に隠された深い悲しみと、リオンへの想いは、キャラクターに複雑な奥行きを与えています。普段は飄々としている南雲が、リオンに関することになると見せる真剣な表情や、彼女の仇を討つという強い意志は、読者に強い印象を残します。
また、リオンの「優しい人が優しいままでいられる世界」という理想と、それを実現するために自分だけが手を汚すという覚悟は、彼女のキャラクターの魅力を一層引き立てています。彼女の死が単なる悲劇で終わるのではなく、南雲やスラーの行動に大きな影響を与え続けているという点も、物語に深みを与えています。
南雲とスラーの対決も、単なる復讐劇ではなく、リオンの死の真相を知り、彼女の遺志を継ぐための戦いとして描かれています。この複雑な感情と動機が絡み合った展開は、読者に「単なるバトル漫画」を超えた感動を与えています。
『SAKAMOTO DAYS』は、アクションシーンの迫力だけでなく、キャラクター同士の深い関係性や、彼らの過去と現在を繋ぐ物語の構成によって、多くの読者の心を掴んでいます。南雲とリオンの物語は、その中でも特に印象的なエピソードとして、作品の魅力を高めているのです。